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脳卒中の感覚障害|自宅でできる工夫としびれ・痛みの向き合い方

コラム

脳卒中の後に「しびれが残る」「触った感覚がわかりにくい」「痛みや違和感が続く」といった感覚障害に悩む方は少なくありません。

感覚障害は、手足の使いにくさや歩きにくさにつながるだけでなく、日常動作や体の使い方にも影響します。

一方で、感覚に対する取り組みには、感覚を使い直す練習や、体の動かし方を整える工夫、電気刺激など、改善を支える方法がいくつかあります。

この記事では、脳卒中で感覚障害が起こる理由、回復の見通し、日常でできる工夫、そして異常感覚や痛みへの考え方まで、わかりやすく整理します。

自宅でできる感覚の練習、生活環境の整え方、痛みやしびれがあるときの対処法、ご家族のかかわり方まで、すぐに実践できる内容を紹介します。

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はじめに

■ こんな感覚の変化はありませんか?

✅しびれが気になる。

✅触った感覚が鈍い。

✅少し触れただけでも痛い。

✅ピリピリ、ジンジンする。

✅手足の位置がつかみにくい。

✅力加減がわかりにくい。

脳卒中の後に、こうした感覚の変化に気づく方は少なくありません。

見た目には大きな変化がなくても、手を伸ばす、物をつかむ、歩く、立ち上がるといった動作がやりにくくなることがあります。

■ こんな生活環境で気になることはありませんか?

✅部屋の中でつまずきやすい。

✅床の段差や敷物が気になる。

✅暗い場所で手足の位置がわかりにくい。

✅浴室や台所でヒヤッとすることがある。

✅熱いものや冷たいものを扱うのが不安。

✅よく使う物の置き場所が決まっていない。

✅片手で使いにくい道具が多い。

✅椅子やベッドから立ち上がりにくい。

✅歩くときに家具や壁にぶつかりやすい。

✅通路が狭く、動きにくいと感じることがある。

こうしたことは、感覚が弱くなっていると気づきにくかったり、少しの動作でも不安につながったりします。

毎日の暮らしの中で「少し気になるな」と感じることがあれば、早めに見直していくことが大切です。

生活環境を整え、感覚の捉え方を理解することで、つまずきやぶつかりを減らし、手足を動かしやすくなることがあります。

痛みやしびれに対して整理して対応方法を考えることで、「動くと怖い」という不安を軽くし、毎日の生活の動作がいまよりも、動きやすくしていくことにつながります。

脳卒中で感覚障害が起こる理由

脳卒中では、脳の中の「感じる働き」をつかさどる部分や、その情報を伝える道筋にダメージが起こることで、感覚障害が出ることがあります。

たとえば、触った感覚がわかりにくい、温度の違いがわかりにくい、手足の位置がつかみにくい、しびれが続くといった形で表れます。

感覚は、ただ「感じる」だけではなく、動くときの支えにもなっています。

そのため、感覚が弱くなると、手を伸ばす、物をつかむ、立つ、歩くといった動作にも影響しやすくなります。

感覚障害は、しびれのようにわかりやすい形だけではありません。

「触っているのに遠く感じる」「手に力が入りにくい」「足の裏の感覚がぼんやりする」といった、言葉にしにくい訴えとして出ることもあります。

こうした変化は、本人にしかわからないつらさにつながりやすいため、動き方と感覚の両面から見直していくことが大切です。

感覚障害はどう回復していくのか

感覚障害の回復は、少しずつ進むことが多いです。

脳には、使った情報を学び直す力があります。
このような脳のしなやかな変化を「脳の可塑性」と呼びます。
感覚を意識して使う練習を続けることは、この脳の可塑性を引き出す助けになります。

また、まわりの神経回路や別の通り道が、少しずつ働きを補うことがあります。
このように、脳の中でほかの経路が代わりに役割を担う働きを「側副路」といいます。
難しく感じるかもしれませんが、簡単にいうと、脳の中で“別ルート”が少しずつ助けてくれるイメージです。

特に脳出血では、最初は血のかたまりの影響で感覚がわかりにくくても、その影響が少しずつ軽くなることで、感じ方が変わって見えることがあります。

そのため、発症した直後の状態だけで決めつけず、時間の経過とともにどんな変化があるかを見ることが大切です。

回復の速さや程度には個人差がありますが、「何も感じないから終わり」ではありません。

少しずつ変化する方もいれば、使い方を工夫することで、日常での使いやすさが上がってくる方もいます。

また、感覚の回復は、しびれが減ることだけではなく、触った感覚がわかりやすくなる、力加減が調整しやすくなる、といった形でも現れます。

そのため、生活の中でどんな動作がやりやすくなったかを見ていくことが大切です。

改善を支える管理と環境設定

感覚障害があると、見えないところで手足をぶつけたり、熱いものに気づきにくかったりすることがあります。

そのため、まずは生活の中で危険を減らす工夫が大切です。

たとえば、よく使う物は取りやすい位置に置く、床の段差を減らす、熱いものに触れる場面を見直すといったことが役立ちます。

また、片手でも使いやすい道具を取り入れることで、動作の負担を減らしやすくなります。

さらに、立ち上がる場所や歩く通路を整えるだけでも、感覚に頼りすぎずに動きやすい環境をつくることができます。

感覚が弱いと、本人は「何となく不安」「どこに力を入れればいいかわからない」と感じやすくなります。

そのため、環境を整えることは、単なる安全対策ではなく、動作のやりやすさを支える大事な取り組みです。

家の中での工夫は、少しの変更でも負担軽減につながることがあります。

ボディワークスでできること

ボディワークスでは、体の動かし方を整えながら、感覚を使いやすくする工夫を一緒に考えます。

たとえば、立つ・座る・歩くといった基本の動作の中で、どこで力が入りすぎているか、どこで感覚がつかみにくいかを確認しながら進めます。

感覚障害に対しては、触れ方や体重のかけ方、動かす順番を工夫することで、体の使い方をよりわかりやすくしていきます。

また、IVES(アイビス)のような電気刺激治療器を使った取り組みもあります。

電気刺激は、弱い刺激で感覚への入力を増やし、脳が感じ方を学び直しやすい状態をつくる方法です。

つまり、感覚を「もう一度使うきっかけ」を増やして、脳のしなやかな変化を後押しする考え方です。

こちらは別のコラムで詳しく紹介していますので、あわせてご覧いただけます。

『IVES(アイビス)とは?麻痺した手足の動きを取り戻す電気刺激治療 』

さらに、日常生活の中で困りやすい場面に合わせて、環境の整え方をご提案することもできます。

たとえば、立ち上がる位置、歩くときの動線、物の置き場所、触れやすい素材の選び方など、生活に合わせた工夫を考えます。

感覚障害は、机の上での説明だけではイメージしにくいことが多いため、実際の動作に落とし込んで一緒に整理することが大切です。

また、手足の使い方を見直すだけでなく、日常の中で「どの場面で困るのか」を具体的に言葉にしていくことも大事です。

たとえば、コップを持つときに落としそうになる、ボタンをかけるときに指先が思うように動かない、床の感覚がぼんやりして歩き出しにくい、といった困りごとを整理すると、対策が立てやすくなります。

こうした積み重ねをもとに、感覚と動作をつなぐための改善策を一緒に考えていきます。

自宅でできるセルフエクササイズ

自宅では、感覚に意識を向ける時間を少しずつ持つことが大切です。

たとえば、タオルや布、スポンジなど、違う感触のものを触ってみるのも一つの方法です。

素材の違いを比べるだけでも、手の感覚を使う練習になります。

また、目を閉じて手や足の位置を感じる練習や、足裏で床を感じながら立つ練習も役立ちます。

歩く前に、両足で床をしっかり感じてから一歩出すようにすると、足の置き方がわかりやすくなる方もいます。

手であれば、机の上で指先をゆっくり開いたり閉じたりしながら、どの動きで感覚がわかりやすいかを確かめる方法もあります。

大切なのは、無理をせず、短い時間でも続けることです。

感覚は、強く一度だけ刺激するよりも、日常の中で何度も使い直すほうが、変化につながりやすいことがあります。

「できた」「少しわかった」という体験を重ねることが、次の動きにつながります。

痛みや異常感覚について

脳卒中の後には、しびれだけでなく、ピリピリする、ジンジンする、焼けるように感じるといった異常感覚が出ることがあります。

また、触れるだけで痛い、風が当たるだけでつらいといった、感覚の変化にともなう痛みが出ることもあります。

こうした症状は、「気のせい」ではなく、脳や神経の働きの変化として起こることがあります。

感覚障害と痛みは、同じ場所に出ても、起こっている仕組みが違うことがあります。

そのため、「しびれだから我慢」「痛みだから動かさない」と一括りにするのではなく、どんな時に強くなるのか、何がつらいのかを整理することが大切です。

痛みが強いほど、体を守ろうとして動きが減り、さらに使いにくさが増すこともあります。

この悪循環を避けるためにも、痛みの性質を見極めながら対応することが重要です。

また、感覚が鈍いのに痛みだけが強く出ることもあり、脳の感覚をつかさどる部分や、そこへつながる道の変化が関係していることがあります。

一方で、動かしたときだけ痛む場合は、筋肉や関節の負担が影響していることもあります。

痛みの出方を整理することで、必要な対応が見えやすくなります。

少し様子を見ようと考えているうちに、動かしにくさが強くなることもあるため、気になる変化があれば早めに主治医などの専門家に相談するほうが安全です。

ご家族ができること

ご家族は、痛みやしびれについて、まず本人の声を聞くことが大切です。

「どのあたりが気になる?」「どんな感じがする?」と、本人の感覚を言葉にしてもらうことから始めます。

動作を急がせすぎず、使いやすい環境を一緒に整えることも支えになります。

痛みが強い日や、いつもと違う変化があるときは、早めに主治医などの専門家への相談につなげることが大切です。

毎日の関わり方でできること

・しびれてつらそうなとき

「触ると痛い?」「どのあたりが気になる?」と声をかけ、本人が「大丈夫」と言う範囲で、ゆっくりと触れます。

触れる場合は、手のひら全体で優しく包み込むようにすると、安心感につながることがあります。

・痛そうなとき

「今、どのくらい痛い?」「楽な姿勢はどれ?」と、本人の声を聞きます。

無理に動かさず、楽な姿勢で休む時間を確保します。

「今日は休んでもいい日」と認めることも、安心感につながります。

・感覚がにぶい場合

「触ってみて」「どこがわかりにくい?」と声をかけ、本人が気づきにくい場所を一緒に確かめます。

目で見える情報を活用して、「この場所を見てから手を伸ばしてみよう」「足元を確認してから一歩出してみよう」と、生活の中で使えるよう調整します。

・回復の過程に合わせて

発症直後は、安静を保ちながら安心できる環境を整えます。

回復期には、少しずつ感覚を使う練習を、本人のペースで進めます。

頑張りすぎてしまう方ほど、痛みを我慢しやすい傾向があります。
そのため、無理に動かすよりも、本人に合った目標を決めて、少しずつ達成していくことが大切です。
「この動きならできそう」「この方法なら続けられそう」といった、適切なゴール設定が、長く続けるための支えになります。

まとめ

脳卒中後の感覚障害は、しびれだけでなく、感覚のにぶさ、異常感覚、痛みとして表れることがあります。

感覚は動作の土台でもあるため、感覚障害があると、手足の使いにくさや歩きにくさにつながりやすくなります。

・感覚障害は、触覚、温度覚、位置覚、痛みなどに関わる。

・回復は少しずつ進むことが多く、感覚を使い直す練習が役立つ。

・生活環境を整えることも、感覚を使いやすくする大事な工夫。

・自宅では、触る、感じる、確かめる練習を短く続けることが大切。

・痛みが強いときは、脳の感覚をつかさどる部分の変化なども考えながら、早めに相談することが安心につながる。

感覚障害は、見えにくいからこそ、周囲の理解と日々の工夫が大切です。
少しずつ感覚を使い直しながら、生活の中で動きやすさを取り戻していくことが、体の回復を支える大きな助けになります。

【よくあるご質問(Q&A)】

Q1. 脳卒中後のしびれは、良くなりますか?

A. 良くなる可能性はあります。感覚を使い直す練習や、体の動かし方を整える工夫、電気刺激などが回復を支える方法として知られています。

Q2. しびれと痛みが一緒にあるのはなぜですか?

A. 感覚が弱くなるだけでなく、脳の感覚をつかさどる部分や、そこへつながる道の変化によって、痛みや異常感覚が出ることがあります。

Q3. 家でできる感覚の練習には何がありますか?

A. 素材の違いを触って確かめる、目を閉じて手足の位置を感じる、足裏で床を感じるといった練習があります。短い時間でも、続けることが大切です。

Q4. どんな痛みなら、早めに相談したほうがいいですか?

A. 腫れ、熱感や冷感の変化、強い痛み、触れるだけで痛い、動かしにくさが強い場合は、早めに主治医などの専門家に相談するのが安心です。

Q5. 感覚が戻るまで、どれくらいかかりますか?

A. 個人差が大きく、発症早期から時間がたってから変化が見える方もいます。感覚を使い続けることが、回復を支えやすいと考えられています。

【参考文献】

・脳卒中後疼痛の病態特性に関する報告(畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター,2025)

・脳卒中後疼痛のメカニズムに関する報告(畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター,2026)

・回復期脳卒中患者に対する末梢神経感覚電気刺激と課題指向型練習に関する報告(CiNii Research,2024)

・脳卒中患者に対する末梢神経電気刺激と歩行練習に関する報告(CiNii Research,2023)

・脳卒中後の感覚障害に対する取り組みに関する報告(J-STAGE)

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小栢 崇裕

【監修者】

株式会社ナッセ / 理学療法士
小栢 崇裕(オガヤ タカヒロ)

プロフィール
新卒で回復期リハビリテーション病院に入職。
その後、2018年4月にナッセへ訪問リハビリ・デイサービス機能訓練指導員として入職。
デイサービスリハビリ部門リーダーとして約20名のセラピストマネジメントやリハビリデータの収集・解析・フィードバックも行う。
研究業績
・第2回日本予防理学療法学術集会
・第36回東京都理学療法学術大会
・回復期リハビリテーション病棟協会 第31回研修大会in岩手