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「まっすぐ立っているつもり」が危険信号!?|パーキンソン病のピサ症候群とは
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はじめに
「最近、歩いていると体がどちらかに傾いているように見える」と、ご家族からそう言われても、ご本人は「特に傾いているつもりはない」と感じていることがあります。
パーキンソン病では、手足のふるえや動作の遅さだけでなく、体幹が左右どちらかに傾く姿勢の変化が現れることがあります。
このような姿勢の傾きは「ピサ症候群」と呼ばれることがあります。
特徴的なのは、周囲から見ると体が傾いているのに、ご本人には「まっすぐ立っている」ように感じられる場合があることです。
これは注意不足や意欲の問題ではなく、身体の傾きを感じ取る感覚や、姿勢を調整する脳の働きが関係している可能性があります。
この記事では、ピサ症候群とはどのような症状なのか、なぜ体が傾くのか、ご本人が気づきにくい理由、自宅で確認できるポイント、日常生活での工夫について、できるだけ分かりやすく解説します。
【セルフチェック】こんな様子はありませんか?
✅ 家族から「体が横に傾いている」と言われたことがある。
✅ 鏡や写真を見て、自分で思っていたより体が傾いていると感じる。
✅ 座っているときより、立っているときや歩いているときに傾きが目立つ。
✅ 横になって休むと、傾きが軽くなるように感じる。
✅ 傾きを直そうとしても、どの位置が「まっすぐ」なのか分かりにくい。
当てはまる項目がある場合は、姿勢の傾きがパーキンソン病に伴う変化として現れている可能性があります。
傾きが続く場合は、写真や動画で様子を記録し、主治医や専門家に相談してみることも一つの選択肢です。
「ピサ症候群」とは
パーキンソン病の方で、体幹が左右どちらかに傾き、立っているときや歩いているときに姿勢の偏りが目立つ状態を、ピサ症候群と呼びます。
名前は、イタリアにある「ピサの斜塔」に由来しています。
医学的には、体幹が横方向に10度以上傾くことが一つの目安として使われています。
ただし、角度だけでピサ症候群かどうかを決めるわけではありません。
傾きがどの程度続いているか、立っている姿勢や歩行時の姿勢に影響しているか、横になると軽くなるか、痛みや動きにくさがあるかなどを含めて確認します。
ピサ症候群の傾きは、背骨そのものが曲がって固定された状態とは異なり、横になると軽くなったり、人の手で姿勢を支えると戻りやすかったりすることがあります。
ただし、傾いた姿勢が長く続くと、筋肉や関節に負担がかかり、徐々に姿勢を戻しにくくなる場合があります。
また、パーキンソン病以外の神経の病気など、ほかの要因が関係している場合もあります。
体の傾きが気になったときは、原因を自己判断で決めつけず、主治医や専門家に相談してみることも一つの選択肢です。
なぜ、体が傾いてしまうのか
ピサ症候群が起こる理由は一つではなく、いくつかの要因が重なっていると考えられています。
筋肉の働きに左右差が生じている
体の左右で筋肉のこわばり方や働き方に差があると、片側に引っ張られるように体が傾くことがあります。
パーキンソン病では、もともと左右のどちらかに症状が強く出ることがあるため、姿勢の傾きにも左右差が現れる場合があります。
傾いた姿勢が長く続いている
最初は一時的な傾きだったとしても、その姿勢を長時間続けると、筋肉や関節が硬くなり、元の姿勢に戻りにくくなることがあります。
座るときにいつも同じ側へ寄りかかる、歩くときに同じ方向へ体が傾くなど、日常の姿勢のくせが影響する場合もあります。
体の位置を感じ取る働きが変化している
私たちは、目で見なくても、自分の体がどの位置にあるかをある程度感じ取っています。
パーキンソン病では、この「体がどこにあるかを感じる力」や、体の左右のバランスを感じ取る働きに変化が起こることがあります。
そのため、実際には体が傾いていても、ご本人には「まっすぐ」と感じられる場合があります。

「まっすぐ」の感覚がずれることがあります
ピサ症候群で知っておきたいのは、体の傾きが単なる筋力低下だけでは説明できない場合があることです。
ご本人が「まっすぐ立っている」と感じている姿勢が、周囲から見ると大きく傾いていることがあります。
これは、ご本人が姿勢を確認していないからではありません。
脳の中にある「まっすぐ」の基準や、体の傾きを感じ取る働きが変化している可能性があります。
近年は、こうした身体の感じ方や、脳の中で自分の体の位置を把握する仕組みが、ピサ症候群に関係していると考えられています。
このため、「傾いているから直して」と繰り返し伝えるだけでは、ご本人がうまく修正できないことがあります。
鏡や写真、壁などの目印を使い、本人の感覚と実際の姿勢の違いを一緒に確認することが、姿勢への気づきにつながる場合があります。
日常生活で起こりやすい困りごと
体の傾きは、立ち姿だけでなく、歩行や座る動作、手を使う場面にも影響することがあります。
・歩いているときに左右へふらつき、壁や家具に肩がぶつかる。
・方向転換や狭い場所の通り抜けで、バランスを崩しやすくなる。
・椅子に座るときに身体が片側へ寄り、座り直しが必要になる。
・食事や着替えのときに身体が傾き、片方の手が使いにくくなる。
・ベッドや椅子から立ち上がるときに身体が傾き、不安定になる。
体の傾きがあると、歩行や立ち上がり、方向転換などでバランスを崩し、転倒につながる可能性があります。
どの動作で傾きやふらつきが強くなるのかを確認し、手すりを使う、動作をゆっくり行う、周囲の障害物を減らすなど、転倒を防ぐ工夫を取り入れましょう。

自宅で取り入れられる工夫
体の傾きに気づいたら、まずは無理のない範囲で、日常生活の中でできる工夫から始めてみましょう。
姿勢を確認する習慣をつくったり、同じ姿勢を長く続けないようにしたりすることで、体の傾きに気づくきっかけを増やせます。
毎日の習慣に「姿勢チェック」を加える
朝起きたときや食事の前、椅子から立ち上がったときなどに、体が左右どちらかに傾いていないか確認しましょう。
鏡など自分の姿勢が映るものを使って、肩の高さや体の中心を見る方法もあります。
自分の姿勢を確認するときは、座った姿勢でも問題ありません。
また立った姿勢の場合は、支えるものが近くにあるなど安定した場所で行いましょう。
寄りかかりやすい環境を見直す
いつも同じ側に寄りかかる場合は、椅子やクッションの位置を見直しましょう。
肘掛けがあるなど体がずれにくく、足の裏が床につく安定した椅子を使うことも大切です。
長時間同じ姿勢を続けず、疲れる前に座り直したり、立ち上がったりしてみましょう。
声かけは「指摘」ではなく「一緒に確認」する
ご家族が傾きに気づいたときは、「傾いているよ」と指摘するより、「鏡で一緒に見てみよう」と声をかけてみましょう。
ご本人は、まっすぐ立っているつもりかもしれません。
その感覚を否定せず、一緒に確認することが大切です。
体の傾きが続く場合や、痛み・歩きにくさ・転倒の増加がある場合は、主治医や専門家に相談してみることも一つの選択肢です。

ピサ症候群に関する最近の知見
ピサ症候群への対応は、パーキンソン病の薬だけ、運動だけという一つの方法で決まるわけではありません。
最近の研究では、パーキンソン病の薬の見直しに加え、身体の左右差を整える運動、鏡や動画を使った姿勢の確認、必要に応じた医療的な治療を組み合わせることが検討されています。
また、ボツリヌス治療(筋肉の緊張を一時的に和らげる注射) については、体幹の筋肉の緊張や痛み、傾きの程度が改善した報告があります。
一方で、すべての方に同じ効果があるわけではなく、改善の程度には個人差があります。
2025年の統合分析では、ボツリヌス治療(筋肉の緊張を一時的に和らげる注射) によって体幹の傾きや痛みが平均的に改善したと報告されていますが、効果は大きく一律ではなく、さらに質の高い研究が必要とされています。
このことからも、ピサ症候群は「ただ姿勢が悪いだけ」と考えるのではなく、筋肉の働き、薬の影響、身体の感じ方、日常生活の動作をまとめて確認することが重要だと分かります。
ナッセボディワークスでできること
ナッセボディワークスでは、体の傾きについて、筋肉の状態だけでなく、ご本人が自分の姿勢をどのように感じているかという点まで含めて確認しています。
立っているとき、歩いているとき、椅子に座っているときなど、実際の生活場面で傾きがどのように現れるかを一緒に確認します。
また、傾きによって困っている動作や、ご本人が今後どうしたいかをお聞きし、生活に合わせた方法をご提案します。
「転倒せずに歩きたい」
「食事のときにまっすぐ座りたい」
「家族に心配をかけずに外出したい」
「自分で姿勢の変化に気づけるようになりたい」
このような目標に合わせて、鏡や動画などを使った姿勢の確認、体幹や下肢の動かし方、日常生活での姿勢の整え方を一緒に考えます。
体が傾いてきたと感じても、「この程度で専門家に相談してよいのか」「もう少し様子を見た方がよいのか」と迷う方も少なくありません。
姿勢の変化が目立ってきたときだけでなく、歩きにくさや立ち上がりにくさ、転倒への不安など、生活の中で気になる変化が現れたときは、身体の状態を確認し、日常生活での工夫を始める一つのタイミングです。
身体の変化に気づいたときの目安や、日常生活で見られるサインについては、こちらのコラムでも詳しく解説しています。
体の傾きが出てきたけれど、いつ頃から専門的なサポートを受ければよいか迷っている方は、相談時期を考える際の参考としてご覧ください。
【パーキンソン病のリハビリはいつから必要?~生活の中で出るサインとは~|ナッセボディワークス】
ご本人の感覚を大切にしながら、無理なく続けられる姿勢の確認方法や、自宅での運動・生活上の工夫をご提案します。
まとめ
パーキンソン病に伴う体の傾きは、「ピサ症候群」と呼ばれることがあります。
✅ 体幹が左右どちらかに傾き、立位や歩行時に目立ちやすい。
✅ 筋肉の左右差、傾いた姿勢の習慣化、体の位置を感じる働きの変化などが関係する。
✅ ご本人には「まっすぐ」に感じられることがあり、自覚しにくい。
✅ 姿勢の傾きは、歩行、方向転換、着座、食事などに影響する場合がある。
✅ 鏡や写真、壁などの目印を使うと、姿勢を客観的に確認しやすい。
✅ 無理に姿勢を戻そうとせず、症状の変化や困っている動作を記録することが大切。
体の傾きに気づいたら、「姿勢が悪い」と決めつけるのではなく、パーキンソン病に伴う変化の可能性も考えてみましょう。
ご本人の感覚を尊重しながら、日常生活で安全に過ごせる方法を少しずつ見つけていくことが大切です。
よくあるご質問(Q&A)
Q. 体の傾きに気づいたら、自宅で何をすればよいですか?
A. まずは、鏡や写真を使って、ご自身の姿勢を確認してみましょう。
朝起きたときや食事の前、椅子から立ち上がったときなど、毎日の習慣に合わせて短時間確認すると続けやすくなります。
また、同じ側に寄りかかったまま長時間過ごさないよう、椅子やクッションの位置を見直すことも大切です。
無理に姿勢を反対側へ戻そうとせず、痛みやふらつきが出ない範囲で取り組みましょう。
Q. 体が傾いている場合、どのような運動をすればよいですか?
A. 体の傾きや身体の状態によって適した運動は異なりますが、まずは安定した椅子に座り、左右の肩の高さや体の中心を確認する練習から始めるとよいでしょう。
鏡や壁などを目印にしながら姿勢を整えるほか、硬くなった肩や背中、体側の筋肉をゆっくり伸ばすストレッチや、無理のない範囲での体操を行うことも役立ちます。
短時間の立ち座りなど、日常生活に近い動きを取り入れる方法もあります。
ただし、痛みやふらつきがある場合、立った姿勢での運動に不安がある場合は、無理をせず、専門家に相談しながら進めてみることも一つの選択肢です。
Q. 本人に「体が傾いている」と伝えても大丈夫ですか?
A. 伝え方によっては、ご本人が責められているように感じることがあります。
「傾いているよ」と一方的に伝えるよりも、「鏡で一緒に確認してみよう」「写真を撮って見てみよう」と声をかける方が、受け入れやすい場合があります。
ご本人がまっすぐ立っていると感じている可能性を理解し、感覚を否定しないことが大切です。
Q. 傾きがあっても、運動をしてよいですか?
A. 体調や傾きの程度によって異なりますが、無理のない範囲で身体を動かすことは大切です。
ただし、痛みやふらつきがある状態で無理に姿勢を戻そうとしたり、難しい運動を行ったりすると危険な場合があります。
まずは安定した椅子に座って姿勢を確認するなど、安全な方法から始めましょう。
立った姿勢での運動や歩行練習については、主治医や専門家に相談しながら進めると安心です。
Q. ピサ症候群と側弯症は同じものですか?
A. 同じものではありません。
側弯症は、背骨の形そのものに変化が起こる病気です。
一方、ピサ症候群では、立っているときや歩いているときに体が傾いていても、横になると傾きが軽くなることがあります。
ただし、見た目だけで判断することは難しいため、体の傾きが続く場合は医療機関で確認してもらうことが大切です。
参考文献
- 難病情報センター.パーキンソン病(指定難病6).
- 岐阜大学大学院医学系研究科脳神経内科学分野.Pisa症候群.
- Barone P, et al. Pisa syndrome in Parkinson’s disease and parkinsonism. 2016.
- Benninger DH, et al. Recent advancements in lateral trunk flexion in Parkinson disease. 2018.
- Pisa syndrome in Parkinson’s disease: clinical features, pathophysiology, and treatment. 2016.
- Effects of Deep Brain Stimulation and Botulinum Toxin to Manage Pisa Syndrome in Parkinson’s Disease. 2025.
「自分や家族の場合はどうなんだろう」
「今やっているリハビリで、この先も大丈夫なのか」
そんな気持ちを抱いている方もいらっしゃるかもしれません。
ナッセボディワークス兵庫伊丹・宝塚は、
脳卒中・パーキンソン病・脊髄損傷など、
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“動きと生活をどうつないでいくか”
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