コラム COLUMN
筋緊張とは?脳卒中・脳性まひの方と家族に知っておいてほしいこと
「筋緊張」という言葉を聞いたことはあっても、実際にどういう状態なのか、なぜリハビリに関係するのか、わかりにくいと感じていませんか?
筋緊張は、筋肉がどのくらい力を入れやすいか、または抜きやすいかに関わる、身体の基本的な状態です。高すぎても低すぎても動きにくさにつながり、脳卒中発症後の方では麻痺の回復に、脳性まひのお子さんでは姿勢や動作の発達に深く関わっています。
この記事では、筋緊張の基礎知識から、脳卒中発症後の方と脳性まひのお子さんでそれぞれどのように見えるのか、日常生活への影響、支援の考え方、そして実際の事例まで、できるだけわかりやすい言葉で解説します。
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筋緊張とは?まず知っておきたい基礎知識
筋緊張とは、安静にしているときでも筋肉に保たれている一定の緊張のことです。私たちは「完全に力を抜いている」と感じていても、実際には姿勢を保つための筋肉の働きが常に存在しています。この働きが、スムーズな動きや安定した姿勢を支えているのです。
よく「筋肉が硬い・やわらかい」という言葉で表現されることがありますが、筋緊張は単なる硬さの問題ではありません。姿勢を保つ力と、必要なときに動かす力のバランスがとれているかどうかが重要です。
イメージとしては、車の「アクセル」と「ブレーキ」に近いものです。脳や神経が、筋肉に対して「もう少し力を入れて」「ここは力を抜いて」という指示を常に細かく調整しています。この調整がうまくいかなくなると、筋緊張が高くなりすぎたり、逆に低くなりすぎたりします。
筋緊張は「高すぎても低すぎても」動きにくさにつながります。どちらの状態も、その人の動作や生活に影響を与えます。
脳卒中発症後の方にみられる筋緊張の変化
脳卒中発症後の方では、筋緊張が高くなったり、低くなったり、時期によって変化することがあります。発症直後は力が入りにくい状態が目立ち、その後、回復の過程で筋緊張が高くなってくることもあります。
脳卒中発症後の方で筋緊張が高すぎるとどうなるか
筋緊張が高すぎると、身体がこわばりやすくなり、動き出しにくさや動作のぎこちなさが生じます。関節を動かそうとしても抵抗があり、スムーズに動けないことが特徴です。
- 着替えのときに袖を通しにくい、ボタンがかけにくい。
- コップを持つときに手に力が入りすぎてしまう。
- 歩くときにつま先が引っかかりやすい、足が突っ張る。
- 姿勢が固まりやすく、寝返りや立ち上がりがしづらい。
脳卒中を発症すると、脳の一部が損傷を受けることで、筋肉への「力を抜いて」という指示がうまく届かなくなることがあります。普段、脳は筋肉に対して「力を入れすぎないように」というブレーキの役割も果たしていますが、脳卒中によってこの働きが弱くなると、筋肉が必要以上に緊張してしまうことがあります。これを「痙縮(けいしゅく)」と呼びます。
痙縮は、脳からの指令の乱れが原因で起こるため、「神経が原因の緊張」と言うことができます。腕が曲がった状態で固まりやすい、足が伸びた状態になりやすいなど、決まったパターンで現れやすいことも特徴です。
一方で、痙縮とは別に、身体をあまり動かさない期間が続くことで、関節や筋肉そのものが硬くなってしまうこともあります。これは神経の問題というより「使わないことによって生じる硬さ」で、拘縮(こうしゅく)と呼ばれます。
つまり、脳卒中発症後の「動かしにくさ」には、
①脳からの指令の乱れによるもの(神経が原因)
②動かさない期間が続いたことによるもの(関節や筋肉自体の硬さ)
という、2つの側面が混ざっていることが多いのです。この2つは対処法が異なるため、どちらが影響しているかを見極めることが大切です。
※痙縮は、発症直後ではなく、回復が進むにつれて目立ってくることが多いです。「以前より手足が硬くなってきた」と感じた場合は、早めに専門家に相談することをおすすめします。
脳卒中発症後の方で筋緊張が低すぎるとどうなるか
脳卒中を発症した直後の急性期には、麻痺側に力がまったく入らない状態になることがほとんどです。これを「弛緩性麻痺(しかんせいまひ)」と呼びます。
これは、脳からの指令が一時的に止まってしまっている状態です。脳がダメージを受けた直後は、まわりの神経も一時的に働きにくくなる「ショック状態」のようなものが起こると考えられています。時間の経過とともに、少しずつ筋緊張が戻ってくることが多いですが、その現れ方は人によって差があります。
この時期は、手足に力が入らない分、関節が本来動く範囲を超えて曲がってしまったり、逆に不自然な位置で固まってしまったりするリスクもあります。そのため、発症直後の適切なポジショニング(身体の支え方)が、その後の回復に大きく影響します。
脳卒中発症後の筋緊張は時期によって変わる
脳卒中発症後の筋緊張は、回復の段階によって状態が大きく変化します。これを知っておくことで、「なんで急に硬くなってきたんだろう」という疑問が解消しやすくなります。

同じ方でも、疲れているとき・緊張しているとき・体調が悪いときには筋緊張が変化することがあります。「昨日はできたのに今日はできない」という体調のムラは、筋緊張の変動が関係していることもあります。
脳性まひのお子さんにみられる筋緊張の変化
脳性まひは、まだ発達の途中にある脳が、なんらかの理由で影響を受けることで起こります。筋緊張は、姿勢や動作の発達に大きく関わるため、脳性まひのお子さんでは特に大切な視点になります。
脳性まひのお子さんで筋緊張が高すぎるとどうなるか
赤ちゃんの脳は、成長とともに「無駄な動きを抑える」「必要な動きだけを引き出す」という仕組みを少しずつ身につけていきます。脳性まひのお子さんでは、この発達の過程がうまく進まないことがあり、その結果、筋緊張が高い状態が続くことがあります。
これも、脳の発達に関わる「神経が原因の緊張」です。姿勢を保ちにくい、思ったように手足を動かしにくいといった様子がみられることがあります。
さらに、成長とともに身体を動かす経験や姿勢のパターンが偏ることで、関節や筋肉が硬くなる「二次的な問題」が加わることもあります。これは大人の拘縮と似た仕組みです。成長期のお子さんでは、この二次的な硬さが将来の姿勢や歩行に影響することもあるため、早い時期からの関わりが大切になります。
脳性まひのお子さんで筋緊張が低すぎるとどうなるか
低緊張が目立つお子さんでは、座る・立つ・歩くなどの動作が安定しにくく、姿勢を保ちながら動くことが難しい場合があります。
これも、脳の発達の仕方によって、姿勢を保つための神経の働きが十分に育っていないことが関係していると考えられています。首やお腹周りの筋肉の筋緊張が低い場合は、頭を持ち上げること自体に時間がかかることもあります。
低緊張の場合、「力を入れる経験」自体が少なくなりがちです。そのため、無理のない範囲で身体を支える経験を積み重ねることが、筋緊張の発達を促すうえで大切になります。
筋緊張が日常生活に与える影響
筋緊張の影響は、見た目の姿勢だけに留まりません。日常生活のさまざまな場面に影響が現れます。

睡眠・休息
麻痺側の緊張が夜間も続くと、眠りが浅くなりやすいことがあります。寝るときのポジショニングを整えることが、睡眠の質にもつながります。
こうした困りごとは、本人の努力不足ではなく、身体の使い方に関わる問題として理解することが大切です。そのうえで、動きやすい環境を整え、練習の工夫を重ねることが回復への道につながります。
筋緊張への支援で大切な考え方
筋緊張への支援において、「緊張を下げる」「やわらかくする」ことだけが目的ではありません。大切なのは、その人が必要な動きをしやすくなること、そして生活の中で無理なく続けられることです。
筋緊張の問題には、
①脳からの指令に関わるもの(神経が原因の問題)
②関節や筋肉そのものの硬さ・使わないことによる変化(神経以外の問題)
という2つの側面があります。この両方を見極めながら支援を考えることが重要です。
具体的な支援アプローチの例
- 座位での姿勢を整えるためにクッションで骨盤を支える。
- 麻痺側の腕の重みをテーブルに乗せて肩の緊張を抜く。
- 膝の下にクッションを入れて下肢の緊張をやわらげる。
- 首の隙間を枕で支えて頭頚部の重みをとる。
- 動きやすいポジションをつくったうえで、日常動作を練習する。
- 無理のない範囲で動作経験を積み重ね、脳と体に動き方を覚えさせる。
- IVES(アイビス)などの電気刺激機器を使い、動きにくくなっている筋肉に働きかける。
IVES(アイビス)について
IVESとは、ご本人が「動かそう」とするときに出るわずかな信号を機械がキャッチし、そのタイミングに合わせて電気刺激で動きをサポートする機器です。
自分の意思と連動して筋肉に働きかけるため、ただ電気を流すだけの機器とは異なり、「動かそうとする力」と「実際の動き」を結びつける練習に役立ちます。神経が原因の筋緊張の問題に対して、有効なアプローチのひとつとして活用しています。
なお、IVES(アイビス)に関する情報は過去に投稿したコラム「IVES(電気刺激装置)が脳卒中後の麻痺回復にもたらす可能性:兵庫県で受けられる先進リハビリ | ナッセボディワークス」でも詳しく解説しています。あわせて参考にしていただくと、より理解が深まります。
睡眠と筋緊張のつながり
見落とされがちですが、筋緊張と睡眠には深い関係があります。麻痺側の無意識の緊張が夜間も続いていると、眠りが浅くなりやすく、翌日のリハビリにも影響します。
寝るときのポジショニングを整えることで、全身の力が抜けた状態をつくりやすくなります。筋緊張への支援は、リハビリの時間だけでなく、睡眠中・日常の姿勢の中でも継続して行うことが重要です。
良質な睡眠がリハビリ効果を高めるポイントに関しては、過去に投稿したこちらのコラム「脳卒中発症後の睡眠不足は機能改善を妨げる?運動学習の視点からみる良質な睡眠とは! | ナッセボディワークス」でもご確認いただけます。
ナッセボディワークスで大切にしている支援
ナッセボディワークスでは、筋緊張の高さや低さだけを単独で見るのではなく、姿勢・動作・生活場面を総合的に確認したうえで、その方に合った支援を考えます。
脳卒中発症後の方であれば、回復段階や麻痺のパターンに合わせたアプローチを。脳性まひのお子さんであれば、発達段階や生活動作の目標に合わせた関わりを行います。
ナッセボディワークスが大切にしている3つの視点

視点1:生活の中での困りごとから考える
脳卒中発症後の方では、「麻痺側の手で服のボタンがかけにくい」「歩くときに足が引っかかる」といった具体的な場面から、その動作に必要な筋緊張の調整を考えます。
脳性まひのお子さんでは、「椅子に座って給食を食べる」「靴を履いて歩く」など、生活や学校での場面を起点に、必要な姿勢づくりや動作練習を組み立てます。
視点2:リハビリ外の時間にも目を向ける
脳卒中発症後の方では、日中のリハビリだけでなく、生活スタイルや家屋環境を把握したうえで、日中の過ごし方、就寝時のポジショニングまで含めて提案し、夜間の麻痺側の緊張をやわらげることを目指します。
脳性まひのお子さんでは、リハビリの時間だけでなく、自宅での座り方などの過ごし方、遊びの中での姿勢にも目を向け、ご家族と一緒に生活場面での関わり方を考えます。
視点3:無理なく続けられる方法を一緒に考える
脳卒中発症後の方では、「毎日全部やろう」とせず、その日の体調や麻痺の状態に合わせてリハビリ内容を調整し、無理なく続けられるペースを一緒に見つけます。
脳性まひのお子さんでは、成長のペースに合わせて目標を少しずつ更新しながら、ご家族が自宅でも取り組みやすい方法を一緒に考えていきます。
事例紹介|足の刺激が、肘の動きにつながったケース
ここでは、実際にナッセボディワークスで関わらせていただいた事例を、一部を変えてご紹介します。効果には個人差があり、すべての方に同じ結果が出るわけではありませんが、身体は部分ごとに独立しているのではなく、全身がつながっているということを知っていただくきっかけになればと思います。
こんな状態でした
脳卒中発症後、麻痺側の肘が曲がったまま伸びにくく、着替えや物を持つ動作に苦労されていた方がいらっしゃいました。肘だけをストレッチしても、なかなか伸びやすさが続かないという状態でした。
どう関わったか
肘そのものだけにアプローチするのではなく、麻痺側の足の裏に着目しました。IVESを使いながら、足の裏から適切な刺激を入れ、しっかりと足で体重を支えて立つ練習を行いました。足でしっかり体重を支えられるようになると、身体全体の姿勢を保つ働きが安定してきます。人の身体は、足元から姿勢を支える力が整うと、腕や手の緊張のパターンにも変化が現れることがあります。
結果として
立つ練習を重ねていく中で、それまで伸びにくかった肘が、少しずつ伸ばしやすくなっていきました。肘そのものへの直接的なアプローチだけでなく、足元からのアプローチが、離れた部位の動きやすさにつながった一例です。
このように、筋緊張の問題は、気になる部分だけを見るのではなく、身体全体のつながりの中で考えることが大切です。
まとめ
筋緊張は、身体を支え、動きを生み出すうえで欠かせない要素です。高すぎても低すぎても動きにくさにつながるため、「硬い・やわらかい」という表面的な状態だけで判断することはできません。
- 筋緊張は「高すぎても低すぎても」日常生活に影響する。
- 筋緊張が変化する背景には、神経からの指令に関わる問題と、関節や筋肉自体の硬さという、2つの側面がある。
- 脳卒中発症後は時期によって筋緊張の状態が変化する。
- 脳性まひのお子さんでは、発達の途中で筋緊張の影響が姿勢や動作に現れることがある。
- 支援の目的は「緊張を下げること」ではなく「動きやすくなること」。
- IVESなどの機器も、動きにくさへのアプローチのひとつになりうる。
- 気になる部分だけでなく、身体全体のつながりの中で考えることが大切。
- 睡眠中のポジショニングなど、生活全体での関わりが重要。
- 本人・家族と一緒に、無理なく続けられる方法を考えることが大切。
筋緊張を理解することは、その方の動きと生活をより深く理解するための第一歩です。「なんとなく動きにくい」「以前よりうまく動けない」と感じていることがあれば、ぜひ一度専門家に相談してみてください。
よくあるご質問(Q&A)
Q1. 筋緊張は自分でほぐすことができますか?
A. ストレッチや温める、リラックスした姿勢をとるなど、日常生活の中で緊張をやわらげる工夫はできます。ただし、脳卒中発症後の過緊張や痙縮は、原因が脳の指令の乱れにあるため、自己流のマッサージや強引な関節の動かし方はかえって緊張を強めたり、痛みにつながることがあります。まず専門家に相談したうえで、自宅でできる方法を教えてもらうのが安心です。
Q2. 筋緊張が高い状態は、リハビリを続ければ改善しますか?
A. 適切なリハビリと生活環境の整え方によって、筋緊張のコントロールは改善が期待できます。リハビリの内容・頻度・日常生活での姿勢や動き方の工夫が組み合わさることで、より効果が出やすくなり、動きやすい状態に整えていきます。
Q3. 夜中に手足が硬くなって目が覚めるのは、筋緊張と関係がありますか?
A. 関係している可能性があります。脳卒中発症後の方では、麻痺側の筋緊張が夜間も続いていることがあり、寝ている間に手足がこわばって目が覚めるという訴えは少なくありません。寝るときのポジショニング(枕やクッションの使い方)を整えることで、全身の力が抜けやすくなり、睡眠の質が改善するケースがあります。気になる場合はリハビリの専門家に相談してみてください。
Q4. 子どもの筋緊張は、成長とともに変わりますか?
A. 成長や経験によって変化することがあります。特に脳性まひのお子さんでは、適切なリハビリや日常の動作練習を積み重ねることで、姿勢や動きが安定してくることがあります。一方で、成長に伴って筋緊張が高くなるなど、パターンが変化することもあるため、定期的に専門家による評価を受けながら、その時期に合ったアプローチを続けていくことが大切です。
参考文献
- 公益社団法人日本リハビリテーション医学会 障害者の体力評価ガイドライン策定委員会 編.障害者の体力評価ガイドライン.金原出版.
- 脳性まひの療育と理学療法.診断と治療社.
- 筋緊張のコントロール.理学療法ジャーナル.
- 脳性麻痺小児における筋緊張、剛性、可動域、および疼痛知覚の生体力学的および臨床的差異:横断研究.
- 脳卒中発症後における筋緊張変化と痙縮評価に関するレビュー論文.
「自分や家族の場合はどうなんだろう」
「今やっているリハビリで、この先も大丈夫なのか」
そんな気持ちを抱いている方もいらっしゃるかもしれません。
ナッセボディワークス兵庫伊丹・宝塚は、
脳卒中・パーキンソン病・脊髄損傷など、
病院でのリハビリを終えた後も
“動きと生活をどうつないでいくか”
を大切にしている自費リハビリ施設です。
一人ひとりの状態を丁寧に確認し、
電気刺激治療機IVES(アイビス)や
免荷歩行装置アンウェイなども活用しながら、
今の生活環境や目標に合わせた関わりを行っています。
「通うかどうか」ではなく、
「今の状態をどう捉えればいいのか」
を整理するだけでも構いません。
まずは気軽に相談できる窓口として、
LINEでの無料相談をご用意しています。
また、実際のリハビリの考え方や現場の雰囲気は、
文章だけでは伝わりにくい部分もあります。
センター長自身が解説しているYouTubeチャンネルでは、
日常生活での困りごとやリハビリの視点についても発信しています。