コラム COLUMN

脳卒中発症後の睡眠不足は機能改善を妨げる?運動学習の視点からみる良質な睡眠とは!

コラム

脳卒中発症後、「しっかり寝たはずなのに疲れが取れない」「夜中に何度も目が覚める」「日中に眠くてリハビリに集中できない」といった睡眠不足でお悩みの方も多いのではないでしょうか。

実はこうした睡眠不足は、脳卒中発症後の回復を支えるはずのリハビリに影響し、運動学習の定着を妨げている可能性があります。脳卒中発症後のリハビリでは、日中に練習した動作をうまく脳に残し、日常生活で使えるようにしていくことが大切です。

本記事では、睡眠不足が脳卒中発症後の回復にどのように関係するのかを、運動学習の視点からわかりやすく解説します。

リハビリに関するご相談を受付中!
まずはお気軽にご連絡ください。

運動学習とは

運動学習とは、動作を繰り返し練習することで、よりスムーズに、より正確に体を動かせるようになる過程を指します。脳卒中発症後のリハビリでは、ただ筋力をつけるだけでなく、脳と身体に「動き方を覚え直してもらう」ことが大切です。

たとえば、立ち上がるときの重心の移し方や、麻痺側の足に体重を乗せる感覚、歩くときの足の出し方などは、練習を通して少しずつ身についていきます。こうした学習は、その場で終わるのではなく、時間をおいて定着していく点が特徴です。

なお、運動学習と神経回復の関係については、過去に投稿したコラム「リハビリで結果を出すために知っておきたい『運動学習』と『神経回復』の関係」でも詳しく解説しています。あわせて参考にしていただくと、より理解が深まります。

脳卒中発症後に起こる睡眠障害とは

脳卒中発症後には、寝つきにくさ、中途覚醒、早朝覚醒、日中の強い眠気など、さまざまな睡眠障害が起こることがあります。睡眠不足が続くと、疲れが取れにくいだけでなく、リハビリへの意欲や集中力にも影響しやすくなります。 

また、脳卒中発症後には睡眠時無呼吸症候群を合併する方も少なくありません。いびきや睡眠中の呼吸停止、起床時の頭痛、日中の強い眠気などがみられる場合には、睡眠の質が低下している可能性があります。睡眠時無呼吸症候群は再発リスクとも関連するとされており、気になる症状がある場合には医療機関で相談することも重要です。

脳卒中発症後の睡眠不足は、単なる「寝不足」ではなく、回復そのものを妨げているサインかもしれません。 

睡眠による運動学習の効率化について

研究では、睡眠をはさんだあとに、運動課題の正確性や動きの安定性が改善することが報告されています。これは、睡眠中に日中の練習内容が整理され、記憶として定着しやすくなるためだと考えられています。

特に深い睡眠であるノンレム睡眠では、日中に繰り返し行った動作に関連する神経回路が再活性化されると考えられています。この過程は「記憶の固定(memory consolidation)」と呼ばれ、練習した動作が長期的な運動記憶として脳内に保存される重要な時間です。脳卒中発症後の運動学習においても、この記憶固定の働きが回復過程を支えている可能性が示されています。

脳卒中発症後の方を対象にした報告でも、睡眠をとった群のほうが、運動課題の成績がよくなる傾向が示されています。つまり、睡眠は「休む時間」であるだけでなく、リハビリの成果を高めるための大切な時間でもあります。

効果的に良質な睡眠をとる方法

良質な睡眠をとるためには、毎日の生活リズムを整えることが基本です。できるだけ同じ時間に起床し、日中は適度に活動し、夜は強い光や刺激を減らすことが睡眠の安定につながります。

また、就寝前の長時間のスマートフォン使用や、遅い時間のカフェイン摂取は避けたほうがよいとされています。入眠しやすい環境を整えることも大切で、室温、照明、寝具、騒音なども見直したいポイントです。

脳卒中発症後は疲れやすさもあるため、昼寝をする場合は長くなりすぎないよう調整すると、夜の睡眠を妨げにくくなります。眠れない日が続く場合は、生活習慣だけでなく、睡眠障害の有無も確認することが重要です。

睡眠不足が続くとどうなる? 

睡眠不足が続くと、注意力や反応速度が落ちやすくなり、動作の正確性も低下しやすくなります。これは、歩行や立ち上がり、移乗など、日常生活に必要な動作にも影響します。

一方で、十分な睡眠をとることで、練習した動きが安定しやすくなり、翌日のリハビリでも動作の再現性が高まりやすくなります。特に脳卒中発症後は、日ごとのコンディション差が大きいため、睡眠を整えることがパフォーマンスの安定にもつながります。

睡眠の質を高めるための運動のポイント

睡眠の質を上げるためには、日中に適度な運動を取り入れることも有効です。たとえば、散歩や立ち座り練習、下肢の筋力トレーニングなどを、無理のない範囲で続けると、夜の寝つきがよくなることがあります。

具体的には、以下のような運動が取り入れやすい方法です。

  • 屋内や自宅の周囲を5〜10分ほど歩く
  • 椅子からの立ち座りを行う
  • つま先上げやかかと上げなど、足首まわりを動かす
  • 軽いスクワットや足上げ運動を行う 

ただし、就寝直前の強い運動は、かえって目が冴えることもあります。そのため、運動は日中から夕方までの時間帯に行い、夜はストレッチや深呼吸など、身体を落ち着かせる内容に切り替えるとよいでしょう。

夜に取り入れやすい方法としては、以下のようなものがあります。

  • ふくらはぎや太もものストレッチをゆっくり行う
  • 深呼吸を数回繰り返して、気持ちを落ち着かせる
  • 肩や首をやさしく回して、身体のこわばりを和らげる

脳卒中発症後の方では、疲労や麻痺の程度に合わせて運動量を調整することが大切です。続けやすさを重視しながら、睡眠とリハビリが互いに良い影響を与える流れをつくることがポイントです。

こんな症状があれば睡眠を見直しましょう

次のような症状がある場合、睡眠の質が低下している可能性があります。

✅夜中に何度も目が覚める
✅朝起きても疲れが取れない
✅昼間に強い眠気がある
✅リハビリに集中できない
✅日によって体調の差が大きい
✅いびきや呼吸停止を指摘される

睡眠の問題は本人が自覚しにくいことも多いため、ご家族からの情報も重要になります。気になる症状が続く場合は、睡眠習慣だけでなく、医療機関での相談も検討すると安心です。

ナッセボディワークスで提案する睡眠と運動学習のポイントは?

ナッセボディワークスでは、脳卒中発症後の運動学習を支えるために、リハビリの内容だけでなく、日常生活全体の整え方も大切にしています。運動課題の練習に加えて、睡眠を妨げやすい生活習慣や日中の活動量にも目を向け、回復しやすい土台づくりを意識します。

たとえば、新しく練習した動作や課題を日中のリハビリで行い、その後に十分な休息や睡眠を確保することで、学習した内容の定着が期待できます。たくさん練習することだけでなく、いつ練習して、どのように休むかも運動学習には重要な要素です。

  • 日中は、歩行練習や立ち上がり練習など、課題に合わせた運動を行う
  • 夜は、スマートフォンや強い光を避けて、眠りやすい環境を整える
  • 疲れが強い日は、運動量を調整し、休息を優先する

睡眠不足が続く場合は、生活習慣だけでなく睡眠障害の可能性も考え、かかりつけの医師に相談することも必要です。 

また、日中の運動量を確保しつつ、夜は休息しやすい生活リズムに整えることや、本人の疲労度に応じてリハビリの時間帯を調整することも大切です。こうした工夫によって、運動学習が進みやすい環境をつくることを目指します。

ナッセボディワークスでは、睡眠と運動学習を切り離さず、生活の中で無理なく続けられる方法をご提案していきます。

まとめ

脳卒中発症後の運動学習を高めるうえで、良質な睡眠はとても重要です。睡眠は、日中のリハビリで練習した動作を脳に定着させ、翌日の運動パフォーマンスを支える役割を担っています。

一方で、脳卒中発症後には睡眠障害や睡眠時無呼吸症候群が起こりやすく、睡眠の質が下がると回復にも影響しやすくなります。そのため、運動学習を効果的に進めるには、リハビリ内容だけでなく、睡眠習慣や生活リズムにも目を向けることが大切です。

ナッセボディワークスでは、運動練習と睡眠の両面から、脳卒中発症後の回復を支える考え方を大切にしています。良い睡眠を味方につけることが、より良い運動学習と生活の広がりにつながります。

参考文献

  1. Sleep and Motor Learning: Implications for Physical Rehabilitation. PMCID: PMC4656813.
  2. Sleep and motor learning in stroke (SMiLES). PMCID: PMC10868290.
  3. Fulk GD, Boyne P, Hauger M, et al. The Impact of Sleep Disorders on Functional Recovery and Participation Following Stroke: A Systematic Review and Meta-Analysis. 2020.
  4. Hermann DM, et al. Enhancing motor learning in people with stroke via memory reactivation during sleep. 2021.
  5. Sleep enhances off-line spatial and temporal motor learning after stroke. 2009.
  6. Improving sleep and learning in rehabilitation after stroke. 2023.

「自分や家族の場合はどうなんだろう」
「今やっているリハビリで、この先も大丈夫なのか」
そんな気持ちを抱いている方もいらっしゃるかもしれません。

ナッセボディワークス兵庫伊丹・宝塚は、
脳卒中・パーキンソン病・脊髄損傷など、
病院でのリハビリを終えた後も
“動きと生活をどうつないでいくか”
を大切にしている自費リハビリ施設です。

一人ひとりの状態を丁寧に確認し、
電気刺激治療機IVES(アイビス)や
免荷歩行装置アンウェイなども活用しながら、
今の生活環境や目標に合わせた関わりを行っています。

「通うかどうか」ではなく、
「今の状態をどう捉えればいいのか」 を整理するだけでも構いません。
まずは気軽に相談できる窓口として、 LINEでの無料相談をご用意しています。

▶ LINEで無料相談してみる

また、実際のリハビリの考え方や現場の雰囲気は、
文章だけでは伝わりにくい部分もあります。
センター長自身が解説しているYouTubeチャンネルでは、
日常生活での困りごとやリハビリの視点についても発信しています。

▶ ナッセボディワークスのYouTubeを見る

公式LINE友だち追加バナー

LINEでお気軽にご相談ください。

リハビリに関するご相談を受付中!
まずはお気軽にご連絡ください。

小栢 崇裕

【監修者】

株式会社ナッセ / 理学療法士
小栢 崇裕(オガヤ タカヒロ)

プロフィール
新卒で回復期リハビリテーション病院に入職。
その後、2018年4月にナッセへ訪問リハビリ・デイサービス機能訓練指導員として入職。
デイサービスリハビリ部門リーダーとして約20名のセラピストマネジメントやリハビリデータの収集・解析・フィードバックも行う。
研究業績
・第2回日本予防理学療法学術集会
・第36回東京都理学療法学術大会
・回復期リハビリテーション病棟協会 第31回研修大会in岩手