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リハビリは、いつ終わる?どのタイミングでやめるのが一番いいの?

コラム

……このコラムを読んでくださる方は、少なからずリハビリ経験者か、今まさにリハビリに励まれている方ではないでしょうか。

(それを見越して、、、)いつもリハビリ、おつかれさまです。

ちなみに、私自身も現在、リハビリに励んでいる身であり、実はそのやめるタイミングに悩んでいます。
後で詳しく話しますが、今回はこの『リハビリをやめるタイミング』に関して、少し考えてみましょう。

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リハビリって本当に終わるの?実は終わらない?!

以前のコラムでもお話ししましたが、“リハビリ”とは、「元々あった状態から変化した身体状況を元の状態に戻すこと」です。
ですので、罹った病気や怪我が完治して、完全に元の生活に戻れるようになった時が、リハビリをやめるタイミングのひとつです。

……そんなことは分かっている、と怒られてしまいそうですね。

失礼いたしました。

問題は、上記の「完全に元の生活に戻れる」ことが難しい場合のときです。

リハビリに励んでおられるほとんどの方が、こちらの場合に当てはまるかと思います。
「完全には戻れないのだから、今後一生リハビリしないといけない」とお考えの方も居られるかもしれません。

その際、やめるタイミングの重要な判断材料になるのが、『目標』です。
そしてその目標を定める指標の一つに『QOL』があります。
この2つのキーワードについて、詳しく述べていきましょう。

 『目標』

みなさん入院されていても通院されていても、以下のような“計画書”が1ヶ月ないしは3ヶ月に1回作成され、同意・承諾のもとリハビリを実施されていると思います。この計画書には、リハビリで回復を目指すところの『目標』が必ず記載されています。

この目標が達成された時が、リハビリをやめるタイミングのひとつです。

(図:リハビリテーション総合実施計画書)

例えば、の話をします。

営業職のAさんは、趣味のサッカーで怪我をして、すねの骨を骨折してしまいました。車の運転も営業回りもできず、当然ながらサッカーもできません。とにかく仕事ができないのは生活が困るので、目標を「仕事への復帰」としました。

このような状態では、まず骨折の治癒が最優先です。これに関しては、医師の診断や許可が必要でしょう。それに合わせて、リハビリも進んでいきます。

そしてめでたく骨折が治癒した段階で、痛みは残っていますが、日常生活や仕事は安全に行えるほどに回復しました。この段階で、リハビリを終了することは可能です。

しかし、痛みが残っている加減で不便も多く、まだ思いきりサッカーに打ち込むこともできません。それも困る、ということで、次は「痛みの解消と趣味への復帰」と目標を変えてリハビリを継続することも可能です。

 『QOL』

この「QOL」とは、“Quality Of Life”の略であり、「生活の質」「人生の質」などと訳されます。

上記のAさんのような例え話のように、整形疾患であれば、受傷等で起こった疾患自体は完治できることが多いため、上記の様に判断できます。

しかし、脳血管障害や神経疾患、難病等では、疾患自体の完治が難しく、症状として麻痺や神経症状が残存したり、進行して増悪したりします。これらの場合、「QOL」の考え方が大切になってきます。

ここでも例えば、の話をします。

独り暮らしをしていた高齢者のBさんは、脳梗塞を発症し、入院しました。

幸い命に別状はなかったものの、右半身に麻痺が残り、杖歩行が必要となりました。屋内での移動はある程度安全に安心して行えますが、屋外での歩行は不安も多く、また買い物の際に荷物がたくさん持てません。その改善を目標に、リハビリを続けていました。

その状況を見かねた娘夫婦が、Bさんと同居することになり、屋外での歩行時にはできる限り付き添ってくれるようになりました。また、買い物も重たいものはネットで注文できるように準備してくれました。不安が解消され、Bさんは一旦リハビリを終了しました。

現在、Bさんは「娘夫婦と旅行に行きたい」と、改めてリハビリに励んでおられます。

……言い方を換えると、言葉は悪いですが、「如何に自身の身体状況に折り合いをつけるか」という視点をもってリハビリを考えていくことで、やめるタイミングを見出すことはできます。

これは“障害受容”と言う考え方にも関連してきますが、上記Bさんの例え話で言うと、娘夫婦の助けを借りながらでも、日常の生活は問題なく行えており、私の人生は満たされている、と考えるならば、リハビリは必要ないでしょう。

また、娘夫婦に迷惑かけたくないから、やっぱり自分でちゃんと買い物できるようになりたい、とリハビリを続けることも、ひとつの考え方だと思います。

リハビリをやめるにしても、続けるにしても、覚えておきたいこと

ここまで、リハビリをやめることを考える上で、判断材料となる視点や指標のことを話してきました。

しかし、ここで覚えておいていただきたいのは、時間的な観点と経済的な観点です。

以前のコラムで紹介させていただきましたが、日本の医療・介護制度の中では、ひとつの疾患名でリハビリを行える期間が定められています。

また、医療保険を使うにしても、介護保険を使うにしても、保険適応外にて対応するにも、それなりのお金が掛かります。

ご自身の目標の達成度だけでなく、そこに時間の制約、経済面の制約も考慮しながら、様々な視点で折り合いを付け、リハビリを続けるのか、やめるのか、を考える。

そうしていただけると、のちのち後悔する、ということが少なくなるかもしれません。

私自身の体験談

最後に、手前味噌ながら、私の体験談を少し話します。

冒頭部分で、「私自身もリハビリをやめるタイミングで悩んでいる」と書きました。

去年の秋、私は仕事中に自転車で転倒し、左脛骨(すねの骨)を不全骨折しました。

骨折自体はシーネ固定と免荷により約1ヶ月半で完治しました。

(シーネ固定イメージ:株式会社竹虎ソフラットシーネⅡ)

そのタイミングで仕事にも復帰しましたが、動作時に痛みがあったり、正座ができなかったり、とっさの動きや走ることが上手くできなかったり、と生活上でも仕事上でも不便が強かったため、継続して通院リハビリを続けることにしました。

…そして約1年が経ちますが、未だに動作時の痛みは残存しており、波があります。

ありがたいことに、正座は痛みなく出来るようになりました。走ることは、まだ全力ではできません。とっさの動きでも、脚をねじる動作時に、ズキッと痛みが走ることがよくあります。

もうすでに、受傷日から150日は過ぎているので、集中的なリハビリは期待できません。週に2回程度、1回20分の介入で予約していますが、仕事の繁忙もあり、週1回程度になる時もあります。幸い、労災認定されたため、費用はかからず実施しています。

このような状況において、私自身は、せめて全力で走ることができるようになりたい、とそこに目標を置いて、リハビリに励んでいます。

但し、私自身もリハビリを生業とする端くれですので、実際は、リハビリの時間内だけの治療では足りないこと、痛みに関してはおそらく完全に消失することは難しいこと、このようにダラダラと続けていても効果は薄いこと、は理解しています。

ですので、そろそろこのリハビリもやめるタイミングかな、と考えたりもします。

ただ、私にとってこのリハビリは、自身の治療という一面の他に、他のセラピストの治療技術を学ぶ・自身の知識の振り返りをする、という付加価値があります。そういった側面も考慮しつつ、自身の「QOL」も加味した上で、リハビリをやめるタイミングを推し量っていきたいと、このコラムを書きながら改めて考えさせていただきました。

まとめ

いかがだったでしょうか。

今回のコラムでも、ここに読みに来てくださった方の、何かしら参考となる部分がありましたでしょうか。

確かに、長い間リハビリを続けていたり、思うような効果が出てこなかったりしたら、「このリハビリっていつ終わることができるんだろう。。」と思いたくなることも、無理のない話だと思います。

ただ、リハビリを続けることで、自身の今の身体の状況に気づけたり、運動不足が解消できたり、廃用予防や生活リズムを整えることができたりと、様々なよい効果も、副産物として現れることも多々あります。

もちろん、リハビリなんかしなくても日々充実して過ごすことができるのならば、それが一番ですが、そうでないのなら、いろいろな視点を持って、リハビリをもう一度振り返るチャンスが来ているのかもしれません。

今回も、このコラムが何かの役に立っているならば、幸いです。ありがとうございます。

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小栢 崇裕

【監修者】

株式会社ナッセ / 理学療法士
小栢 崇裕(オガヤ タカヒロ)

プロフィール
新卒で回復期リハビリテーション病院に入職。
その後、2018年4月にナッセへ訪問リハビリ・デイサービス機能訓練指導員として入職。
デイサービスリハビリ部門リーダーとして約20名のセラピストマネジメントやリハビリデータの収集・解析・フィードバックも行う。
研究業績
・第2回日本予防理学療法学術集会
・第36回東京都理学療法学術大会
・回復期リハビリテーション病棟協会 第31回研修大会in岩手