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脳卒中と水分摂取|脱水予防で再発リスクを減らす飲み方のタイミングと注意点 

コラム

脳卒中の再発予防には、脱水を防ぐために水分を少しずつこまめにとり、トイレ不安やむせやすさに合わせて飲み方を工夫することが大切です。

「水分は大事だと分かっているけれど、トイレが近くなるのが心配で控えている」「むせやすいので、飲みたくても思うように飲めない」

脳卒中の当事者やご家族から、こうした声をよくお聞きします。
水分摂取が大切だと理解していても、実際の生活では不安や負担が重なり、十分に飲めていない方も少なくありません。

脳卒中発症後は、脱水がきっかけで体調を崩しやすくなったり、血液の流れが悪くなったりすることがあります。
水分摂取は、再発予防を考えるうえで見逃せない生活習慣のひとつです。

この記事では、脳卒中のご本人が脱水になりやすい身体的な理由、水分を控えたくなる気持ちの背景、日常で続けやすい飲み方のタイミング、そして注意が必要なケースまで、整理して解説します。 

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 脳卒中の方の脱水サインを確認しましょう

次の項目に、いくつ当てはまるか確認してみましょう。

✅口の中が乾きやすい。

✅尿の回数がいつもより少ない、または色が濃い。

✅立ち上がるとふらつきやすい。

✅ぼんやりする、疲れやすいと感じる。

✅むせるのが心配で、水分を控えている。

✅トイレが近くなるのが気になって、水分を飲む量を減らしている。

✅飲み物を用意するのが面倒で、つい飲み忘れる。

✅食事量が少なく、食事から摂取できる水分も減っている。

✅夜間のトイレが不安で、夕方以降はあまり水分を飲んでいない。

当てはまる項目が多いほど、知らないうちに脱水が進んでいる可能性が考えられます。

脳卒中の方が脱水になりやすい、身体的な理由 

脳卒中の方は、一般的な方と比べて脱水になりやすい身体的な要素をいくつか抱えていることがあります。まずは、その要因を整理します。

むせやすく、思うように飲めない

後遺症として飲み込みにくさが残ることがあります。
水分は特にむせやすく、「飲みたいけれど怖い」と感じ、結果的に摂取量が減りやすくなります。

のどの渇きに気づきにくい

身体の感覚が鈍くなっていたり、発症前より動作に時間がかかり忙しさの中で渇きのサインを見逃したりすることがあります。
自覚する前に軽い脱水が進んでいるケースも少なくありません。

食事量が減っている

食欲低下により食事量が減ることで、食事から摂れる水分量も一緒に減りやすくなります。

介助が必要で、飲む回数が減る

自分で飲み物を取りに行けない、コップを持ちにくい、声を出して頼みにくいといった理由から、飲む機会そのものが少なくなることがあります。 

水分を控えたくなる、脳卒中の方の気持ちの面での理由 

脱水になりやすい身体的な理由がある一方で、脳卒中の方が「あえて水分を控えている」というケースも多くあります。
これは単なる習慣ではなく、生活の中で積み重なってきた切実な事情によるものです。
理由を知ることで、「もっと飲んでください」と伝えるだけでなく、その方に合った工夫を一緒に考えやすくなります。

トイレが近くなるのが不安

最も多く聞かれる理由です。特に夜間は、転倒への不安や、装具・杖・歩行器の準備にかかる手間から、水分を控えてしまう方が少なくありません。

むせるのが怖い

一度むせる経験をすると、飲むこと自体への不安が大きくなります。
むせの経験が重なるほど、水分摂取を避けたい気持ちが強くなっていきます。

飲むこと自体が負担になっている

身体を動かすのがつらい、飲み物を用意するのが大変、声をかけないと飲まないなど、疲れやすさや意欲の低下が水分摂取に影響していることもあります。

どのくらい飲めばよいか分からない

「たくさん飲むべきなのか」「飲みすぎはよくないのか」の基準があいまいだと、判断がつかず、結果として控えめになってしまうことがあります。 

脱水がなぜ再発リスクにつながるのか 

体内の水分が不足すると、血液に含まれる水分量も減少します。

血液の水分が減ると血液の粘度(濃さ)が上がり、血管の中を流れにくくなります。

【チェックポイント】
血液の粘度が上がった状態が続くと、血管の中で血液の成分が固まりやすくなり、血栓(血のかたまり)ができやすくなります。
この血栓が脳の血管に詰まれば脳梗塞の再発に、心臓の血管に詰まれば心筋梗塞につながることがあります。だからこそ、脳卒中の方にとって水分摂取は再発予防に直結する習慣となります。 

時間帯別|続けやすい水分摂取のタイミング 

水分摂取は、一度にたくさん飲むよりも、少しずつ・こまめに続けることが大切です。
特に脳卒中の方は、場面ごとにタイミングを決めておくと習慣化しやすくなります。

起床直後

ポイント:コップ1杯を目安にする

理由・工夫:睡眠中は水分をとらないため、起床時は脱水気味になりやすい時間帯です。
      朝の1杯は血流の低下を防ぐ意味でも役立ちます。

食事の前後

ポイント:少しずつ、忘れずに飲む

理由・工夫:食事の前後に飲む習慣をつけると、飲み忘れを防ぎやすくなります。
      むせやすい方は、飲み方や姿勢に注意しましょう。

日中

ポイント:数回に分けて飲む

理由・工夫:一度にまとめて飲むより、数回に分けたほうが体への負担が少なくなります。
      時間を決めておくと習慣化しやすくなります。

就寝前

ポイント:控えすぎない

理由・工夫:トイレが心配だからと夜だけ極端に減らすと、翌朝の脱水につながります。
      また寝直前ではなく、少し前倒しで飲んでおくと安心です。

「夜は一切飲まない」という極端な対応は、翌朝の脱水を強めてしまう可能性があります。
トイレへの不安がある場合は、飲む時間を工夫することで、水分摂取と夜間の安心を両立させやすくなります。 

飲み込みにくい方への工夫

脳卒中の後遺症で飲み込みにくさがある場合、水分は特に注意が必要です。
むせを減らしながら、必要な水分をとるための工夫を紹介します。

  • 少量ずつ、ゆっくり飲む
  • 姿勢を整えてから飲む(あごを引いた姿勢を意識す)
  • 必要に応じてとろみをつける
  • 飲み物の温度や種類を変えてみる
  • 一人で難しい場合は、言語聴覚士に相談する

水分は「飲めないからやめる」のではなく、「飲みやすい形に変える」という考え方が役立ちます。 

水分をとるときに注意したいこと 

脳卒中の方であっても、すべての方に同じ飲み方が当てはまるわけではありません。
持病や服薬の内容によっては、注意が必要な場合があります。

心不全がある場合

水分を増やしすぎると、息切れやむくみにつながることがあります。
主治医から指示がある場合は、その内容を優先してください。

腎機能が低下している場合

水分量の調整が必要になることがあります。
自己判断で増減せず、医師の方針を確認することが大切です。

利尿薬を使用している場合

トイレが近くなりやすく、水分摂取への抵抗感が強くなることがあります。
服薬のタイミングも含めた調整が必要な場合があります。

ご家族ができるサポート 

ご家族のサポートは、水分摂取を無理なく続けるうえでとても大切です。
ただし、「飲ませること」だけを目的にすると、ご本人の負担が大きくなってしまうことがあります。

✅飲みやすい時間帯に、さりげなく飲み物を出す

✅持ちやすいコップやストローを用意する

✅夜間、トイレまでの動線を整えておく

✅むせやすさや飲む量の変化を、日々の中でさりげなく観察する

✅ふらつきが急に強くなったときは、脱水を疑う

生活の中で無理なく続けられる形を一緒に整えていくことが、結果的に水分摂取の継続につながります。 

ナッセボディワークスで大切にしていること

ナッセボディワークスでは、水分摂取を「量」だけで判断せず、生活の流れの中で無理なく続けられる形を一緒に考えます。
脳卒中の再発予防を意識する方、飲み込みにくさがある方など、それぞれの状態に合わせて支援します。

とくに、起床直後・入浴前後・就寝前といったタイミングを整えることは、日常の中で取り入れやすい実践です。大きく変えるより、続けられる小さな工夫を積み重ねることが大切です。 

まとめ

脳卒中の方にとって、水分摂取は再発予防を支える大切な生活習慣です。
むせやすさ、渇きへの気づきにくさ、トイレへの不安、夜間の移動の負担などが重なり、知らないうちに水分不足に陥りやすいことを、まず理解しておくことが第一歩です。

  • 脱水は血液の粘度を上げ、血栓ができやすい状態につながる
  • 脳卒中の方は、身体的な理由と気持ちの面での理由の両方が水分不足につながりやすい
  • 水分は少しずつ、時間帯を決めてこまめにとることが基本
  • むせやすい場合は、飲み方・姿勢・とろみなどで飲みやすい形に変える
  • 心不全や腎機能低下がある場合は、必ず主治医の指示を優先する

ご家族の見守りと工夫が、継続の支えになる 「飲みすぎが心配だから控える」のではなく、その方に合った量とタイミングを見つけていくことが、脳卒中の再発予防につながります。 

また迷ったときは自己判断せず、主治医やリハビリの専門職に相談しながら、その人に合った水分のとり方を見つけていくことが安心です。 

なお、脱水に関する情報は過去に投稿したコラム
「パーキンソン病と水分摂取|脱水予防で立ちくらみ・便秘・ふらつきを防ぐ飲み方と注意点 | ナッセボディワークス」でも詳しく解説しています。
あわせて参考にしていただくと、より理解が深まります。 

【よくあるご質問(Q&A)】

Q1. 水を飲むとトイレが近くなるので、控えたほうがいいですか?

A. 極端に控えると脱水につながることがあります。夜間のトイレが不安な場合は、就寝の直前ではなく1時間ほど前に飲んでおく、日中にこまめに分けてとるといった工夫が役立ちます。

Q2. むせやすいときは、どんな飲み方がよいですか?

A. 一度にたくさん飲まず、少量ずつゆっくり飲むことが基本です。あごを引いた姿勢を意識する、必要に応じてとろみをつけるといった工夫も有効です。むせが続く場合は、言語聴覚士など専門家に相談することをおすすめします。

Q3. どのくらい水を飲めばよいですか?

A. 持病や服薬内容、体格によって適量は変わります。心不全や腎機能低下がある方は、自己判断せず必ず主治医の指示を優先してください。

Q4. お茶やコーヒーでも水分補給になりますか?

A. 水分としての効果はありますが、利尿作用があるため、飲んだ分すべてが体に残るわけではありません。日常の水分補給は水や麦茶を中心にし、お茶やコーヒーは嗜好品として楽しむ位置づけにすると続けやすくなります。 

参考文献

  1. 日本脳卒中学会.脳卒中治療ガイドライン.
  2. 日本神経学会.脳卒中後のリハビリテーション関連資料.
  3. 厚生労働省.熱中症予防と水分補給に関する情報.
  4. 日本循環器学会/日本心不全学会.心不全診療ガイドライン.

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小栢 崇裕

【監修者】

株式会社ナッセ / 理学療法士
小栢 崇裕(オガヤ タカヒロ)

プロフィール
新卒で回復期リハビリテーション病院に入職。
その後、2018年4月にナッセへ訪問リハビリ・デイサービス機能訓練指導員として入職。
デイサービスリハビリ部門リーダーとして約20名のセラピストマネジメントやリハビリデータの収集・解析・フィードバックも行う。
研究業績
・第2回日本予防理学療法学術集会
・第36回東京都理学療法学術大会
・回復期リハビリテーション病棟協会 第31回研修大会in岩手