コラム COLUMN

脳梗塞による言語障害は治る?回復のしくみとリハビリのポイントを徹底解説

コラム

「話したいのに言葉が出てこない」
「相手の言っていることが理解できない」
——脳梗塞を経験した方やそのご家族にとって、言語障害は日常生活を大きく左右するつらい症状のひとつです。

「もう元通りには話せないのでは」と不安を感じている方も多いでしょう。
しかし、医学的な観点からは、適切なリハビリを継続することで、多くの方が言語機能の回復を実感できることがわかっています。

このコラムでは、脳梗塞後の言語障害(失語症)が「なぜ起こるのか」「なぜ回復できるのか」を脳科学・リハビリ医学の知見をもとに解説し、自宅でも取り組めるリハビリのヒントもお伝えします。

リハビリに関するご相談を受付中!
まずはお気軽にご連絡ください。

脳梗塞で言語障害が起こるしくみ

言語機能は、主に左大脳半球の特定の領域が担っています。なかでも重要なのが、次の2つです。

  • ブローカ野(前頭葉下部):言葉を「話す・組み立てる」機能を担う
  • ウェルニッケ野(側頭葉上部):言葉を「理解する」機能を担う

脳梗塞によってこれらの領域やその周辺に血流が途絶えると、神経細胞が傷つき、言語機能に障害が生じます。
これを医学的には「失語症」と呼びます。

失語症には「話す」「聞く」「読む」「書く」という4つの言語機能がさまざまな組み合わせで障害されるため、症状の現れ方は個人によって大きく異なります。

スムーズに話せないタイプ(運動性失語)
聞いて理解することが難しいタイプ(感覚性失語)
ほぼすべての言語機能が障害される重度のタイプ(全失語)
などがあります。

「治る」ために重要な脳の可塑性とは

「一度傷ついた脳は元に戻らない」と思われがちですが、現代の神経科学はそれを否定しています。
鍵になるのが「脳の可塑性(神経可塑性)」という性質です。

脳の可塑性とは、繰り返しの刺激や練習によって神経回路が新たに形成・強化される能力のことです。
損傷を受けた領域の機能を、周辺の健常な神経細胞が少しずつ代償するようになります。
また、右半球の言語関連領域が左半球の機能を一部補うことも研究で明らかになっています。

つまり、適切な刺激(リハビリ)を与え続けることで、脳は変化し続けます。
「もう遅い」「年齢が…」と諦める必要はありません。

回復しやすい時期とは?

脳梗塞発症後の回復には、一般的に「回復期」と呼ばれる時期があります。
発症後3〜6か月は神経可塑性が特に高まりやすく、この時期の集中的なリハビリが回復に大きく影響することが知られています。

一方で、発症から1年・2年以上が経過している「慢性期」であっても、適切な言語療法によって機能改善が見られることが多くの研究で報告されています。回復は長期にわたるプロセスであり、「慢性期だから手遅れ」ということはありません。

言語障害のリハビリ:言語聴覚士(ST)の役割

脳梗塞後の言語障害のリハビリを専門的に担うのが言語聴覚士(Speech-Language-Hearing Therapist:ST)です。
言語聴覚士は、個々の患者さんの症状・障害パターンを詳しく評価した上で、その方に合ったリハビリプログラムを組み立てます。

代表的なリハビリアプローチには以下のものがあります。

① 刺激法(Schuell’s Stimulation)

言語刺激を繰り返し与えることで、残存する言語機能を引き出すアプローチ。
「聞かせる・見せる・繰り返す」という基本動作を積み重ねます。

② メロディック・イントネーション・セラピー(MIT)

言葉にメロディをつけて発話する訓練法。
運動性失語(ブローカ失語)に対して有効性が報告されており、歌のリズムを活用することで、通常の発話が難しい方でも言葉を引き出しやすくなります。

③ 制約誘発言語療法(CILT)

文字や身振りなど言葉以外のコミュニケーション手段をあえて制限し、言語表現を集中的に促す方法です。
集中的なリハビリが脳の可塑的変化を促すという考え方に基づいています。

④ コミュニケーション支援(AAC)

話す機能の回復が難しい場合でも、文字盤・スマートフォンアプリ・ジェスチャーなどを活用してコミュニケーションの質を維持・向上させます。
コミュニケーション自体が脳への刺激となり、回復を促すことにもつながります。

自宅でできる!言語機能を維持・高める日常的な取り組み

リハビリは病院や施設だけでするものではありません。
日常生活の中で言語を使う機会を積極的につくることが、脳への持続的な刺激となります。

  • 声に出して読む(音読):新聞・本・テレビのテロップなど、毎日少しずつ声に出して読む習慣をつける
  • 会話を楽しむ:家族や友人との日常会話が最良の言語リハビリ。うまく話せなくても続けることが大切
  • 日記をつける:短い文でも毎日書くことで、文章構成・語想起の練習になる
  • 好きな歌を歌う:歌詞を覚えて歌うことは、記憶と言語機能の両方を刺激する
  • ラジオ・ポッドキャストを聴く:耳からの言語刺激は「聴理解」の訓練になる

大切なのは「完璧に話せること」を目標にしないことです。
うまく言えなくても、伝えようとする行為そのものが脳を動かし、回復につながります。

ご家族ができるコミュニケーションのサポート

失語症のある方にとって、周囲の関わり方はリハビリの質に直結します。
以下のような配慮が助けになります。

  • ゆっくり、はっきりした言葉で話しかける
  • 短い文で一度にひとつのことを伝える
  • 言葉が出てこないときは、本人が言いたそうな言葉を「〇〇ですか?」と確認しながら補助する(先に答えを言い過ぎない)
  • 表情・ジェスチャー・メモなどを組み合わせてコミュニケーションする
  • 「伝えようとする意欲」をほめ、焦りを与えない雰囲気をつくる

ご家族の関わりが、本人のモチベーションと回復スピードに大きな影響を与えます。
焦らず、長い目で支えることが何より大切です。

いつから・どこで始めればいい?

言語リハビリは発症後できるだけ早期から開始するほど効果が高いとされています。
急性期病院から回復期リハビリ病院、そして退院後の外来・通所リハビリと、段階に応じたサポートを継続することが理想です。

しかし実際には「退院後にリハビリをどこで続ければよいかわからない」「通える施設が近くにない」というご相談もよく寄せられます。

私たちの施設では、脳梗塞後の言語障害・失語症に対するリハビリについて、専門のスタッフが個別にご相談をお受けしています。どんな些細な疑問でも、まずはお気軽にご連絡ください。

▶ 言語障害のリハビリについて無料で相談する

友だち追加

まとめ:脳梗塞の言語障害は、あきらめなくていい

脳梗塞後の言語障害(失語症)は、適切なリハビリによって多くの方が回復を実感できる症状です。
回復の背景には「脳の可塑性」という力があり、継続的な言語刺激がその力を引き出します。

大切なポイントをまとめると:

  • 失語症は「話す・聞く・読む・書く」が様々な組み合わせで障害されるもの
  • 脳の可塑性により、適切なリハビリで機能回復が期待できる
  • 発症後早期の介入が理想だが、慢性期でも改善は見込める
  • 言語聴覚士による専門的訓練に加え、日常の言語使用が重要
  • ご家族の関わりが回復の鍵を握る

「まだ回復できる」という希望を持ちながら、焦らず一歩ずつ取り組んでいきましょう。私たちもそのサポートを全力でお手伝いします。

友だち追加

【参考文献】
Saur D, et al. (2006). Dynamics of language reorganization after stroke. Brain, 129(6), 1371–1384.
Berthier ML. (2005). Poststroke aphasia: epidemiology, pathophysiology and treatment. Drugs Aging, 22(2), 163–182.
Brady MC, et al. (2016). Speech and language therapy for aphasia following stroke. Cochrane Database of Systematic Reviews.

「自分や家族の場合はどうなんだろう」
「今やっているリハビリで、この先も大丈夫なのか」
そんな気持ちを抱いている方もいらっしゃるかもしれません。

ナッセボディワークス兵庫伊丹・宝塚は、
脳卒中・パーキンソン病・脊髄損傷など、
病院でのリハビリを終えた後も
“動きと生活をどうつないでいくか”
を大切にしている自費リハビリ施設です。

一人ひとりの状態を丁寧に確認し、
電気刺激治療機IVES(アイビス)や
免荷歩行装置アンウェイなども活用しながら、
今の生活環境や目標に合わせた関わりを行っています。

「通うかどうか」ではなく、
「今の状態をどう捉えればいいのか」 を整理するだけでも構いません。
まずは気軽に相談できる窓口として、 LINEでの無料相談をご用意しています。

▶ LINEで無料相談してみる

また、実際のリハビリの考え方や現場の雰囲気は、
文章だけでは伝わりにくい部分もあります。
センター長自身が解説しているYouTubeチャンネルでは、
日常生活での困りごとやリハビリの視点についても発信しています。

▶ ナッセボディワークスのYouTubeを見る

公式LINE友だち追加バナー

LINEでお気軽にご相談ください。

リハビリに関するご相談を受付中!
まずはお気軽にご連絡ください。

小栢 崇裕

【監修者】

株式会社ナッセ / 理学療法士
小栢 崇裕(オガヤ タカヒロ)

プロフィール
新卒で回復期リハビリテーション病院に入職。
その後、2018年4月にナッセへ訪問リハビリ・デイサービス機能訓練指導員として入職。
デイサービスリハビリ部門リーダーとして約20名のセラピストマネジメントやリハビリデータの収集・解析・フィードバックも行う。
研究業績
・第2回日本予防理学療法学術集会
・第36回東京都理学療法学術大会
・回復期リハビリテーション病棟協会 第31回研修大会in岩手