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脳梗塞後の疲れやすさ・だるさはなぜ起こる?原因と生活での対処法

コラム

「脳梗塞後に「以前より疲れやすくなった」「だるくて眠い」と感じるのは、後遺症としてよく知られた状態です。
この記事では、脳梗塞後の疲れやすさ(Post-stroke fatigue)の原因・特徴・退院後の生活で実践できる対処法を解説します。」

「以前よりもすぐ疲れるようになった」
「特に何もしていないのにぐったりする」

脳梗塞を経験された方から、このような声をよく聞きます。
結論から言うと、これはあなただけの問題ではありません。

脳梗塞後の「疲れやすさ」は非常に多くの方に見られる症状であり、医学的にも知られている状態です。

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脳梗塞後に疲れやすい理由

脳梗塞後に感じる疲労には、いくつかの原因があります。

① 脳のエネルギー消費が増えている

脳梗塞によって一部の神経ネットワークが損傷すると、これまで自動的にできていた動作や思考にも多くのエネルギーが必要になります。
つまり、日常生活を送るだけでも「脳がフル稼働している状態」になりやすく、疲労を感じやすくなります。

② 身体の動かし方が変わっている

麻痺や筋力低下、バランス能力の低下により、身体の使い方が変化します。
その結果、無意識に余分な力が入ったり、効率の悪い動きになったりして、エネルギー消費が増えてしまいます。

③ 自律神経の乱れ

脳梗塞の影響で自律神経が調整静楽なることがあり、疲労感やだるさ、眠気などが出やすくなります。
「しっかり休んでいるのに疲れが取れない」と感じる場合は、この影響も考えられます。
また、気候の変化も自律神経の調整が聞きづらいことで、調子に影響が及びます。

④ 精神的な負担

「また再発したらどうしよう」「以前のように戻れるのか」といった不安やストレスも、疲労感を強める要因になります。
身体だけでなく、心の疲れも大きく関係しています。
これまでだと、そこまで深く考えなかったことも、考えすぎてしまうことがあります。

どれくらいの人が疲労を感じているのか?

実は、脳梗塞後の疲労は非常に一般的で、半数以上の方が何らかの疲れやすさを感じているとも言われています。

そのため、「自分だけがおかしいのでは?」と悩む必要はありません。

脳卒中後疲労(PSF)でもうひとつ大切なのが、「どのくらい続くのか」という視点です。「しばらくすれば治るだろう」と思っていたのに、なかなか疲れが取れない——そういった経験をされている方も少なくありません。

国内外の研究をまとめると、PSFは短期で終わる方もいる一方、数か月〜数年にわたって続く慢性的な症状になりうることが示されています。「長く続くかもしれない症状」として理解しておくことが、焦らず上手に付き合っていくための第一歩です。

時期別に見た脳梗塞後の疲労の経過

発症〜6か月(急性期・回復期)

発症後3か月以内に、約3人に1人が疲労を経験するという報告があります。
この時期の疲労は「急性疲労」とも呼ばれ、最大で6か月ほど続く可能性があります。

注目すべきは、疲労が強いほど身体機能の回復も遅れやすいという相互関係が確認されていることです。
「疲れているからリハビリが進まない」「リハビリが進まないから疲れが取れない」という悪循環が起きやすいこの時期は、無理をしすぎずペースを整えることが特に重要です。

6か月〜2年以降(慢性期)

「退院してだいぶ経つのに、まだ疲れやすい」——それは珍しいことではありません。
研究では次のような報告があります。

  • 軽症の脳梗塞でも、6か月後に約30%、12か月後に約35%の方が疲労を感じていた
  • 脳卒中発症から2年後の時点でも、約40%の方に疲労が続いていた
  • 「一過性脳虚血発作(TIA)」のように身体症状が軽く見えるケースでも、12か月後まで半数以上の方に疲労感が残ることが報告されています

麻痺や言語障害などの目に見える症状が回復していても、「エネルギー不足」だけが長く残ることがある——これが脳梗塞後の疲労の特徴のひとつです。

脳梗塞後の疲労の現れ方には「3つのパターン」がある

脳梗塞後の疲労の現れ方は人によって異なります。
大きく3つのパターンに分けられます。

  • 早期発症タイプ:発症後数週間〜数か月のうちに疲労が現れ、そのまま続くか、徐々に和らいでいくパターン。
    多くの方がこれに当てはまります。
  • 持続タイプ:急性期から慢性期にかけて一貫して疲労が続くパターン。
    身体的な要因だけでなく、気持ちの落ち込みや睡眠の問題、生活環境なども複合的に関わっていることが多いとされています。
  • 晩期発症タイプ:発症から1年ほど経ってから疲労が出てくるパターン。
    うつ症状や睡眠障害、仕事・社会復帰に伴うストレスなど、心理社会的な要因との関連が指摘されています。

どのパターンであっても、「意志が弱いから疲れる」わけではありません。脳がダメージから回復しようとするなかで起きている、れっきとした症状です。

長く続くからこそ、「付き合い方」が大切

脳梗塞後の疲労が数か月〜数年続く可能性があると聞くと、不安になるかもしれません。
しかし、適切なアプローチを続けることで、徐々に軽くなっていくケースも多く報告されています。

大切なのは「早く治そう」と焦ることよりも、疲労と上手に付き合いながら生活を整えることです。

脳梗塞後の疲れに対する日常生活での対処法

① 頑張りすぎないペース配分

一気に活動しようとせず、こまめに休憩を挟むことが重要です。
「少し余裕があるところでやめる」くらいがちょうど良いペースです。

② 動作の効率を見直す

リハビリでは、筋力だけでなく「楽に動ける方法」を身につけることが大切です。
動き方が変わるだけで、疲労感が大きく軽減することもあります。

③ 生活リズムを整える

睡眠や食事のリズムを整えることで、自律神経の安定につながります。
特に睡眠の質は疲労回復に大きく影響します。

④ 不安を一人で抱え込まない

疲れやすさの背景には、心理的な要因も関係しています。
医療職やリハビリスタッフに相談することで、気持ちが軽くなることもあります。

「数か月〜数年のスパンで、少しずつ軽くなっていく」というイメージを持ちながら、長期的な視点でリハビリや生活改善に取り組むことが、回復への確かな道になります。

リハビリでできること

脳梗塞後の疲労は、「体力の問題」だけではなく、「動き方」「神経の使い方」が大きく関係しています。

適切なリハビリによって、
・無駄な力を使わない動作の習得
・効率的な歩行や姿勢の改善
・神経の働きを引き出すアプローチ
などを行うことで、日常生活の負担を軽減できる可能性があります。

まとめ

脳梗塞後に「やたら疲れる」と感じるのは、決して珍しいことではありません。

むしろ、多くの方が経験する自然な変化のひとつです。

大切なのは、「無理をすること」ではなく、
今の身体の状態に合わせた動き方や生活の工夫を見つけていくことです。

もし、「この疲れは改善できるのか?」「もっと楽に動ける方法はないのか?」と感じている方は、専門的な評価とアプローチを受けることで変化のきっかけが見つかるかもしれません。

よくある質問

Q. 脳梗塞後の疲れやすさはいつまで続きますか?

個人差がありますが、脳梗塞後の疲労感は数ヶ月〜数年にわたって続くことがあります。一方で、適切な生活管理とリハビリを続けることで徐々に改善するケースも多くあります。
「もう治らない」と諦めず、疲れが日常生活に大きく支障をきたす場合は主治医やリハビリ担当者に相談してください。症状の程度や原因に応じた対応策を一緒に考えてもらえます。

Q. 脳梗塞後の疲れは普通の疲れと何が違うのですか?

通常の疲れは、十分な睡眠や休息をとれば回復します。しかし脳梗塞後の疲労感(Post-stroke fatigue)は、「休んでも疲れが取れない」「少し動いただけでぐったりする」「朝から疲れている」という特徴があります。
これは筋肉の問題ではなく、脳卒中によって脳の疲労を調節する神経回路が影響を受けているためと考えられています。「怠けている」のではなく、脳が懸命に回復しようとしているサインです。

Q. 脳梗塞後に眠気が続くのはなぜですか?

脳梗塞後の眠気には複数の原因が考えられます。

  • 脳の回復に伴うエネルギー消費:脳が神経回路を再編成しようとするため、通常より多くのエネルギーが使われます
  • 服薬の影響:一部の降圧剤・抗てんかん薬・抗うつ薬は眠気の副作用があります
  • 睡眠の質の低下:夜間の睡眠が浅くなることで日中に眠気が出やすくなります
  • うつ症状:脳卒中後うつを伴っている場合、意欲低下・眠気が現れることがあります

眠気の原因によって対処法が異なるため、症状が続く場合は担当医に相談することをおすすめします。

Q. 退院後に疲れやすい場合、どのように生活を整えればよいですか?

退院後の生活で特に意識していただきたいのが「活動と休息のバランス(ペーシング)」です。

  • 一度に頑張りすぎない:「今日は元気だから」と無理をすると翌日以降に反動が来やすくなります
  • 昼寝は15〜20分程度に:長時間の昼寝は夜の睡眠を妨げ、かえって疲労感が増すことがあります
  • 活動量を少しずつ増やす:リハビリ担当者と相談しながら、無理のない範囲で体を動かす習慣をつけましょう
  • 体調の良い時間帯を把握する:「午前中は比較的動ける」など、自分のリズムを記録しておくと活動計画が立てやすくなります

Q. 家族が脳梗塞後の疲れで動けないとき、どうサポートすればよいですか?

最も大切なのは、「怠けている」「気力が足りない」と誤解しないことです。脳梗塞後の疲れやすさは意志の問題ではなく、脳の状態による症状です。

  • 無理に「動いたほうが良い」と促さず、本人のペースを尊重する
  • 「今日は何がきつかった?」と体調を一緒に記録する習慣をつける
  • 家事や外出など、活動量の調整を一緒に考える
  • 疲れの程度が強くなったり、意欲低下・落ち込みを伴う場合は、うつ症状の可能性も念頭に置いて担当医に相談する

ご家族の理解とサポートは、回復の大きな力になります。一人で抱え込まず、専門家も一緒に活用しながら進めていきましょう。

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小栢 崇裕

【監修者】

株式会社ナッセ / 理学療法士
小栢 崇裕(オガヤ タカヒロ)

プロフィール
新卒で回復期リハビリテーション病院に入職。
その後、2018年4月にナッセへ訪問リハビリ・デイサービス機能訓練指導員として入職。
デイサービスリハビリ部門リーダーとして約20名のセラピストマネジメントやリハビリデータの収集・解析・フィードバックも行う。
研究業績
・第2回日本予防理学療法学術集会
・第36回東京都理学療法学術大会
・回復期リハビリテーション病棟協会 第31回研修大会in岩手