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脳卒中片麻痺の杖歩行とは?3動作から2動作歩行への移行方法を解説

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脳卒中後のリハビリにおいて、杖歩行の獲得は大きな目標の一つです。
中でも「3動作歩行から2動作歩行へ移行できるかどうか」は、歩行の質や生活の自由度を大きく左右します。

しかし実際には、「どのタイミングで2動作歩行へ移行すべきか」という明確な基準は存在していません。
そのため現場では、セラピストの経験や感覚に依存しているケースも少なくありません。

本記事では、科学的知見と臨床経験をもとに、3動作歩行から2動作歩行へ移行するための「実用的な判断基準」を解説します。

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そもそも3動作歩行と2動作歩行の違いとは

まず整理しておきたいのが、それぞれの歩行の特徴です。

3動作歩行は「杖→麻痺側→健側」と一歩ずつ区切って進む歩き方で、安全性を重視したパターンです。
一方で2動作歩行は「杖+麻痺側→健側」と連続的に進むため、より自然で効率的な歩行に近づきます。

つまり、3動作歩行から2動作歩行への移行とは、単なる歩き方の変化ではなく、「安全性中心の歩行」から「効率性も備えた歩行」へのステップアップを意味します。

これができるようになることで、具体的には横断歩道を信号が変わるまでに歩けるようになるなど、屋外での活動の幅も拡大することが可能となるため、歩行のスピードアップを狙う方は、確認しておきたいポイントかと思います。

数値基準が存在しない理由

歩行能力は筋力やバランスだけでなく、感覚や認知機能など複数の要素が関与するため、単一の指標で判断することが難しいとされています。

見る分には簡単そうに見える動作でも、脳卒中は様々な脳の機能を低下させている可能性があります。

高次脳機能障害の症状を呈している方などで、3動作歩行に慣れている方が、いきなり2動作歩行にすることは一般の人が動きを変えるのとはわけが違います。

歩くことでさえも集中して成り立っているという方が多い中で、さらに歩き方を変える、というのはさらにハードルの高いことになるケースも少なくありません。

「バランスのテストでが何点以上なら可能」といった明確なカットオフは確立されていません。
重要なのは、実際の動作の中でどの程度安定性と連続性が担保されているかです。

動作で見る4つの判断基準

臨床で再現性の高い判断を行うためには、以下の4つの視点で評価することが有効です。

① 麻痺側の単脚支持が安定しているか

2動作歩行では、麻痺側に体重を乗せる時間が相対的に長くなります。
そのため、片脚支持の安定性が最も重要な要素となります。

目安としては、杖を使用した状態で麻痺側立脚をとり、健側を軽く浮かせても2秒程度安定して保持できるかどうかを確認します。

このとき、体幹の大きな側屈や後方への逃げが見られる場合は、まだ移行は早いと考えられます。

② 重心移動が連続しているか

3動作歩行は一歩ごとに動作が分断されますが、2動作歩行では重心移動が途切れず連続していく必要があります。

評価のポイントは、麻痺側に乗った際に一瞬で抜けるのではなく、しっかりと「乗り続けられるかどうか」です。また、上下に揺れるのではなく、前方へスムーズに進んでいるかも重要な視点です。

足を付ける音を聞いたときに、一定のリズムで歩行をおこなえているか、というところも確認のポイントです。

③ 杖と麻痺側のタイミングが一致しているか

2動作歩行では、杖と麻痺側下肢を同時に出す協調性が求められます。

「杖を出してから麻痺側が遅れて出る」といったズレがある場合は、まだ動作の統合が不十分です。
一定のリズムで3歩以上継続できるかどうかを確認すると、実用性の判断がしやすくなります。

まずは一歩目だけを反復するステップ練習などをおこなうことで、動きのタイミングを合わせる練習をしてみましょう。

④ 注意分散下でも歩行が崩れないか

実生活では、歩行中に周囲を見たり会話をしたりする場面が多くあります。
そのため、単純な歩行ができるだけでは不十分です。

会話をしながら歩く、周囲の環境に注意を向けながら歩くといった状況でも、歩行パターンが崩れないかを確認することが重要です。

これは、そもそも歩行自体の安定性があり、脳が他の部分にも注意を向けられるようになっているからこそできることだと考えます。

歩行の安定感を高めることと同時に注意を周囲に向けることも併せて練習していくことが重要です。

見落としてはいけない高次脳機能障害の影響

2動作歩行への移行を考える際に、運動機能だけを見て判断するのは危険です。
注意障害や半側空間無視、遂行機能障害などの高次脳機能障害は、歩行の安全性に大きく影響します。

例えば注意障害がある場合、会話や周囲への注意が加わるだけで歩行が崩れやすくなります。
また半側空間無視がある場合は、麻痺側への荷重が不十分となり、2動作歩行では転倒リスクが高まります。

さらに、病識低下がある場合は「自分はできる」という認識のもと無理をしてしまい、重大な転倒につながる可能性もあります。

これらの要素がある場合は、たとえ身体機能が一定の水準に達していても、段階的な導入や環境設定の工夫が必要です。

2動作歩行への移行は「効率と安全のバランス」

3動作歩行は安全性を重視した歩行であり、2動作歩行は効率性を高めた歩行です。
つまり移行とは、「安全性の余裕を一部使って、よりスムーズな移動を獲得するプロセス」と言えます。

そのため、単に「できるかどうか」ではなく、「安全に継続できるか」という視点が重要になります。

まとめ|動作で評価することが最も実用的

3動作歩行から2動作歩行への移行には、明確な数値基準は存在しません。
しかし、動作に着目することで、再現性の高い判断が可能になります。

具体的には、麻痺側の単脚支持、重心移動の連続性、杖と下肢の協調性、そして注意分散下での安定性を総合的に評価することが重要です。

さらに、高次脳機能障害の影響を必ず考慮し、安全性を担保した上で段階的に進めていくことが、実用的な歩行の獲得につながります。

歩行の質を一段引き上げるために、ぜひ「動作で見る」という視点を臨床に取り入れてみてください。

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よくある質問

Q. 3動作歩行から2動作歩行へ移行する明確な基準はありますか?

いいえ、バランステストの点数など単一の数値基準は確立されていません。
麻痺側の単脚支持、重心移動の連続性、杖と下肢の協調性、注意分散下での安定性という4つの動作的な視点から総合的に判断することが、臨床上もっとも実用的とされています。

Q. 高次脳機能障害がある場合、2動作歩行への移行は難しいですか?

個人差はもちろんありますが、難しいケースもあります。注意障害や半側空間無視、病識低下などがあると、身体機能が一定水準に達していても転倒リスクが高まるため、慎重な評価と段階的な導入が必要です。
身体機能だけでなく、これらの高次脳機能障害の有無も必ず確認したうえで移行を検討しましょう。

Q. 2動作歩行への移行練習はどのように行えばよいですか?

杖と麻痺側下肢のタイミングを合わせるステップ練習や、会話をしながら歩くなどの注意分散課題を取り入れる方法が有効です。いきなり実生活レベルを求めず、安全性を確保しながら段階的に難易度を上げていくことがポイントです。

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小栢 崇裕

【監修者】

株式会社ナッセ / 理学療法士
小栢 崇裕(オガヤ タカヒロ)

プロフィール
新卒で回復期リハビリテーション病院に入職。
その後、2018年4月にナッセへ訪問リハビリ・デイサービス機能訓練指導員として入職。
デイサービスリハビリ部門リーダーとして約20名のセラピストマネジメントやリハビリデータの収集・解析・フィードバックも行う。
研究業績
・第2回日本予防理学療法学術集会
・第36回東京都理学療法学術大会
・回復期リハビリテーション病棟協会 第31回研修大会in岩手