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脳梗塞の歩行を改善するためのポイント ~足の「支持性」がなかなか改善しないときに考えたいこと~

コラム

脳梗塞後のリハビリで、多くの方が目標にするのが「歩行の改善」です。
しかし実際の現場では、

・振り出しはできるようになった
・装具をつければ歩ける
・でも麻痺側に体重を乗せると不安定
・一歩一歩が怖い

といった 「足の支持性・安定感が高まらない」問題 に直面することが少なくありません。

この記事では、
「なぜ支持性が改善しにくいのか」
「どこを見直すと歩行が変わりやすいのか」
を、エビデンスを交えながら解説します。

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歩行改善の鍵は「振り出し」より「支持」にある

歩行というと、
「足を前に出すこと」
に目が向きがちです。

しかし、歩行周期の中で最も重要なのは
片脚で体を支える立脚期です。

脳梗塞後歩行では、
・麻痺側の脚で立っている時間が短い
・体重をすぐ健側に逃がしてしまう
という特徴がよくみられます。

実際、脳卒中後歩行では
立脚期の不安定性が歩行速度や転倒リスクと強く関連することが示されています。

つまり、麻痺側で立っている状態の安定性の向上は転倒リスクを改善することにつながります。

足の支持性が改善しない主な要因

① 下肢筋力だけの問題ではない

「筋力が弱いから支えられない」と説明されることは多いですが、
支持性低下は筋力だけでは説明できません。

・股関節、膝、足関節の協調性
・体幹との連動
・荷重に対する感覚入力

これらが組み合わさって初めて、安定した支持が生まれます。

それぞれの関節がバラバラな動きをしてしまうと協調性が取れずに、不安定になってしまいます。
例えば、脚はしっかり伸びているのに腰が引けてしまっている、という状況も協調性が取れていない可能性があります。

慢性期脳卒中患者では、
筋力増強単独よりも課題特異的トレーニングの方が歩行改善に有効と報告されています
(States et al., Phys Ther, 2009)。

つまり単純な膝を伸ばす力をつけることやベッド上でのトレーニングばかりに注力するよりも、
実際に行っている動作に近いトレーニングを行うほうが効果的であることが示されています。

② 麻痺側に「体重を乗せる経験」が圧倒的に少ない

支持性が低い方ほど、
無意識に麻痺側への荷重を避けています。

これは、麻痺側の脚の感覚が鈍いことや筋肉に力が入りにくいことなども影響しています。

結果として
・麻痺側で支える経験が増えない
・感覚入力が乏しい
・さらに不安定になる
という悪循環に陥ります。

体重支持の反復練習は、
立脚期の安定性と歩行対称性を改善することが示されています
(Verma et al., Neurorehabil Neural Repair, 2012)。

③ 足部だけを見すぎている

「足が不安定だから」と
足関節や足趾ばかりにアプローチするケースも少なくありません。

しかし、実際には
・骨盤の位置
・体幹の側屈
・股関節の支持性
が原因で、足が不安定に見えていることも多いです。

歩行中の体幹制御能力は、
歩行自立度と強く関連する因子とされています
(Verheyden et al., Gait & Posture, 2009)。

先ほどの協調性というところでも述べましたが、
体幹や骨盤、股、膝、足などそれぞれの関節にまつわる筋肉が互いに協調し合うことが重要です。

足の支持性を高めるための具体的な視点

① 立位での「麻痺側荷重」を曖昧にしない

なんとなく立つ、ではなく
・どこに体重が乗っているか
・どの関節で支えているか
を明確にします。

鏡や触覚刺激を使いながら
「今、麻痺側で支えている」という感覚を作ることが重要です。

感覚入力を伴う立位練習は、
運動学習を促進することが知られています
(Shumway-Cook & Woollacott, Motor Control)。

② 歩行練習の前に「支持の練習」を入れる

いきなり歩くのではなく、
・片脚支持での荷重保持
・前後左右への重心移動
・小さなステップ練習

など、立脚期に近い課題を先に行います。

このような段階的アプローチは、
歩行の安定性向上に有効とされています
(Winstein et al., Stroke, 2016)。

③ 装具に頼りすぎない・外しすぎない

装具は
「使うか・使わないか」
ではなく
「どう使うか」が重要です。

・支持性を補助しながら荷重練習に使う
・条件を整えて短時間外す

など、目的を持った使用が必要です。

適切な装具使用は、
歩行効率と安全性を高めることが示されています
(Tyson & Kent, Cochrane Database, 2013)。

家族ができるサポートのポイント

「たくさん歩けばよくなる」ではない

支持性が不十分な状態で歩行量だけ増やすと、
・代償動作が固定化
・転倒リスク増加
につながる可能性があります。

「どう支えて歩いているか」に目を向けることが大切です。

小さな変化を言葉にする

・前より体を預けられている
・立つときの不安が減っている

こうした変化は、本人が気づきにくいことも多いです。
家族の声かけは、リハビリ継続の大きな支えになります。

さらに最近ではスマホも普及していることから、自分で歩いている様子をビデオ撮影して、確認することもおすすめです。

自費リハビリでできること

保険リハビリでは
・時間が限られる
・歩行練習が中心になりやすい
という課題があります。

自費リハビリでは
・支持性に特化した評価
・立脚期を細かく分解した練習
・マンツーマンでの修正
が可能です。

「歩いてはいるが、不安定さが変わらない」
そんな方こそ、アプローチを変える価値があります。

まとめ

歩行改善は「足を出す」前に「支える」を見直す

脳梗塞後の歩行改善では、
振り出しよりも
麻痺側でどれだけ安心して支えられるか
が重要です。

・筋力だけに注目しない
・麻痺側荷重の経験を増やす
・体幹や股関節も含めて見る

これらを見直すことで、
歩行の質はまだ変わる可能性があります。

「この先、歩行はもう変わらないのでは」
そう感じている方も、一度ご相談ください。

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小栢 崇裕

【監修者】

株式会社ナッセ / 理学療法士
小栢 崇裕(オガヤ タカヒロ)

プロフィール
新卒で回復期リハビリテーション病院に入職。
その後、2018年4月にナッセへ訪問リハビリ・デイサービス機能訓練指導員として入職。
デイサービスリハビリ部門リーダーとして約20名のセラピストマネジメントやリハビリデータの収集・解析・フィードバックも行う。
研究業績
・第2回日本予防理学療法学術集会
・第36回東京都理学療法学術大会
・回復期リハビリテーション病棟協会 第31回研修大会in岩手