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厚着をすると服の袖が通らない…。冬の「着替え」のイライラを減らすポイント

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脳卒中の後遺症によって手足の麻痺があり、日常生活の中でも困ることが増えてしまいます。

その中でも、服を着替える、という行為は毎日必要な動作でありながらも、時間がかかったり、痛かったりと負担がかかりやすい動作の一つです。

特に冬場になると、着込むようになり、脱ぎ着をする機会も増えるため、余計にストレスを感じる方も多くいらっしゃいます。

今回は片麻痺があっても着替える際の負担を少しでも減らせるようなポイントを解説します。

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冬になると着替えがつらくなる理由

冬服はどうしても、生地が厚くて重く、すべりも悪くなります。
片麻痺やパーキンソン病のこわばりがあると、次のようなことが起こりやすくなります。

  • 袖が硬くて、腕が途中で止まってしまう
  • 片麻痺側の腕が袖の中でねじれたり、後ろに引っ張られて痛みが出る
  • 震えや動きのぎこちなさで袖口を探しているうちに、疲れてしまう

「自分で着たいのに、思うようにいかない」ことで、気持ちも落ち込みやすくなるため、少しでも“引っかかり”を減らす工夫が大切です。

ポイント1:着る前に“9割準備”しておく

袖とすそを、通しやすい形に整える

着る前のひと手間で、袖の通りやすさはかなり変わります。

  • 平らな場所(ベッドやテーブル)の上に服を広げ、両袖をまっすぐに伸ばす
  • 袖口が内側に丸まっていたら、指で軽く広げておく
  • 前開きのシャツやカーディガンなら、ボタンやファスナーはすべて開けた状態にしておく

家族が手伝える場合は、朝のうちに1日分の服をこの状態までセットしておいてもらえると、ご本人の負担がぐっと減ります。

前後・裏表を間違えにくくする

冬服は色も濃く、タグが見えにくいことがあります。

  • 後ろ側(タグ側)に小さな布テープや安全ピンなど、触って分かる目印を付ける
  • ポケットの位置やボタンの向きなど、「ここが前」というポイントを一緒に確認しておく

前後・裏表を着直すのは、体力も気力も消耗します。事前に「迷わない工夫」をしておくことが、イライラ防止につながります。

ポイント2:基本は「動かしにくい側から通す」

片麻痺がある場合の鉄則は、「麻痺側から、元気な側へ」です。

  1. いすやベッドに座り、襟ぐりを両手で広げて持つ
  2. 麻痺側の袖口をできるだけ大きく開き、その中に手先を“誘導する”イメージで入れる
  3. 手首〜肘まで入ったら、服の生地を肩の方へ少しずつ引き上げる
  4. そのあとで、動かしやすい側の腕を通す

先に元気な側から通すと、あとから麻痺側を入れるときに布が突っ張ってしまい、腕が後ろに引っ張られて危険です。
「どんな服でも、必ず麻痺側から」というルールを家族と共有しておくと、介助もスムーズになります。

ポイント3:厚手1枚より“軽い重ね着”を意識する

動きやすい素材を選ぶ

  • 伸縮性のあるインナーやカットソーは、袖を通すときに引っかかりが少なくなります。
  • 袖口がきついタートルネック、固いデニム生地の上着などは、在宅時間が長い日には避けると楽になります。

「家の中」と「外出」の服を分けて考える

  • 家の中:薄手で伸びるインナー+軽いカーディガンやフリース
  • 外出時:その上から、前開きのコートやジャンパーを羽織る

このように、「室内は着やすさ優先」「外で防寒」という考え方に切り替えると、朝の着替えで汗だくになる場面がかなり減ります。

コツ4:毎回同じ「場所」と「段取り」で着替える

座る位置と向きを決めておく

  • 背もたれのあるいす、もしくはベッドの端に腰かけて着替える。
  • ひじ掛けやテーブルが近くにあると、袖を通すときや体を倒すときの支えになり、安全です。
  • 毎回同じ場所・同じ向きで行うと、体が手順を覚えやすくなり、「次にどう動くか」を考える負担が減ります。

服は、座った位置から手を伸ばせば届くところにたたんで置きます。立ってクローゼットまで取りに行く必要がないだけでも、疲れ方が変わります。

「声かけ」を動きのスイッチにする

パーキンソン病の方は、動き出しのきっかけとして「言葉のリズム」が役立つことがあります。

  • 自分で「右手いきます」「次は左手」「せーの」と声に出す。
  • 介助する家族が、「今から右手を入れますね」「せーので前に倒します」と、その都度声をかけてから動かす。

こうした合図を決めておくと、体が準備しやすくなり、予期しない動きによる痛みや不安も減らせます。

コツ5:脱ぐときの順番も決めておく

「着るとき」だけでなく、「脱ぐとき」の順番も統一しておくと、引っかかりや転倒のリスクを減らせます。

脱ぐときは「元気な側から → 麻痺側」

片麻痺がある場合、脱ぐときは着るときと逆の順番が基本です。

  1. 元気な側の袖を先に抜く。
  2. 服を後ろに回さず、前側に引き寄せるようにして、麻痺側の袖をゆっくり外す。

先に麻痺側を引っ張ろうとすると、肩や腕にねじれがかかり、痛みや脱臼のリスクにつながります。
冬物の厚い上着ほど、この「順番のルール」が安全面でも重要になります。

立ったまま無理に脱がない

厚手のコートやセーターを立ったまま頭から脱ごうとすると、ふらつきや転倒の危険が高くなります。

  • できるだけ、いすやベッドに座ってから脱ぐ。
  • コートは前を開けてから、片方ずつ袖を抜く。

「疲れているときほど、座って脱ぐ」を合言葉にしておくと安心です。

コツ6:イライラしたら「いったん区切る」選択肢も

着替えは、うまくいかないとお互いにイライラしやすい場面です。

  • 袖がどうしても通らない
  • 暑くなって汗ばんできた
  • ご本人の表情が明らかにつらそう

そんなときは、いったん手を止めて、深呼吸を数回してから仕切り直すのも大事な工夫です。
途中まで着た服をいったん脱いで、もっと着やすい服に変更する、前開きのものに切り替える、といった柔軟さも「安全第一」の視点からはとても大切です。

まとめ:小さな工夫で「着替えの成功体験」を増やす

冬の着替えは、どうしても負担が大きくなりますが、

  • 服をあらかじめ整えておく
  • 麻痺側から通す/元気な側から脱ぐ
  • 動き方と座る場所を毎回そろえる
  • 無理を感じたら、服や手順を変える勇気も持つ

といった、ちょっとした手順のコツだけでも、「前より楽にできた」「自分でここまでできた」という成功体験を増やすことができます。

ご本人と家族が、「この服なら着やすい」「この順番ならうまくいくね」と話し合いながら、その人なりの“冬の着替えマニュアル”を一緒に作っていけると良いと思います。

「自分や家族の場合はどうなんだろう」
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小栢 崇裕

【監修者】

株式会社ナッセ / 理学療法士
小栢 崇裕(オガヤ タカヒロ)

プロフィール
新卒で回復期リハビリテーション病院に入職。
その後、2018年4月にナッセへ訪問リハビリ・デイサービス機能訓練指導員として入職。
デイサービスリハビリ部門リーダーとして約20名のセラピストマネジメントやリハビリデータの収集・解析・フィードバックも行う。
研究業績
・第2回日本予防理学療法学術集会
・第36回東京都理学療法学術大会
・回復期リハビリテーション病棟協会 第31回研修大会in岩手