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【セラピスト向け】クライアントと目標設定し、行動変容を導くための心理的アプローチ

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はじめに

リハビリの現場で、最初に行うべきこと。
それは評価でも、運動でもなく、「目標設定」です。

目標が曖昧なまま進むリハビリは、方向を失った航海と同じです。
どれほど技術的に正しいプログラムを提供しても、「何のために行っているのか」が本人の中で整理されていなければ、行動は続きません。

ここで一度、立ち止まって考えてみてください。
私たちは本当の意味で、クライアントと目標を共有できているでしょうか。

人が行動を変えるときに必要なのは、新しい方法ではありません。
鍵を握るのは、その人がどんな選択をし、どんな自分で在りたいと感じているかという「内側の構造」です。

行動変容とは、できるようにさせることではなく、
「自分はできる存在だ」と本人が気づいていく過程なのです。

目標が定まらないリハビリが無意味になる理由

例えば、脳梗塞後に左片麻痺を呈した方が「自宅に帰りたい」と話されたとします。

このとき、私たちはつい

  • 歩行が必要
  • トイレ動作が自立しないと
  • 段差昇降が課題だ

と、専門家としての視点で必要条件を組み立てがちです。

しかし、その時点で本当に必要なのは「答え」ではありません。
まず必要なのは、「本人が思い描く自宅での生活」を知ることです。

  • 自宅に帰って、何をしたいのか
  • 誰と、どんな時間を過ごしたいのか
  • どこまでできれば安心だと感じるのか

場合によっては、歩行よりも
麻痺側の上肢を使って食事ができること
一人で更衣ができること
それだけで、生活の満足度が大きく変わる方もいます。

目標をすり合わせないままリハビリを進めることは、
クライアントの人生観を、無意識のうちにこちらの価値観で上書きしてしまう危険をはらんでいます。

「目標の裏側」にある価値にアクセスする

クライアントが口にする目標は、多くの場合、行動レベルにとどまっています。

  • 歩きたい
  • 仕事に戻りたい
  • 前のように動きたい

これらの言葉の奥には、必ずその人なりの意味があります。

  • 社会とのつながりを取り戻したい
  • 家族に迷惑をかけたくない
  • 自分らしさを失いたくない

この「なぜそれを望むのか」という部分に触れたとき、目標は初めて本人のものになります。

そのために有効なのが、次のような問いかけです。

「それができるようになったら、あなたにとって何が変わりますか」
「その状態のとき、どんな気持ちで一日を過ごしていると思いますか」

行動を選ばせる前に、存在の選択に触れる。
このプロセスが、内側からの動機を引き出します。

行動計画よりも「信念の整合性」を整える

行動が続かない理由は、計画が甘いからではありません。
多くの場合、「やろうとしている行動」と「自分に対する見方」が一致していないのです。

  • 自分には無理だ
  • どうせまたできなくなる
  • 頑張っても意味がない

こうした内的な前提を抱えたままでは、どんな行動計画も形骸化します。

セラピストが見るべきなのは、次の三つの層です。

  1. 今、どんな行動を選んでいるか
  2. その行動を可能にしている信念は何か
  3. その人は自分をどんな存在だと捉えているか

この三層が噛み合ったとき、行動は努力ではなく選択になります。

成功体験は「信念を書き換えるため」に使う

信念は事実ではありません。
繰り返し経験した出来事に、どんな意味を与えてきたかの結果です。

だからこそ、私たちは成功体験を偶然に任せてはいけません。
意図的に、確実に「できた」と言える体験を設計する必要があります。

  • 短時間の立位保持
  • 一段だけの階段昇降
  • 週に一度の自主練習の記録

重要なのは、結果の大きさではありません。
「自分で選び、やり遂げた」という感覚です。

その体験を、セラピストが言語化し、意味づけることで、
クライアントの中の前提が少しずつ書き換わっていきます。

セラピストは行動を管理する人ではない

行動変容を支援する立場として、セラピストが担う役割は、
指示を出す人でも、管理する人でもありません。

その人が、自分自身をどう見ているのかを映し出す「鏡」です。

  • 今の行動から何に気づきましたか
  • 思ったよりできた部分はどこですか

こうした対話は、結果以上に「自己理解」を深めます。
気づきが生まれた瞬間から、行動の質は変わり始めます。

行動が続くための構造をつくる

最後に重要なのは、意志に頼らない仕組みづくりです。

  • 家族や支援者と目標を共有する
  • 進捗が目に見える形で残るようにする
  • 定期的に意味を振り返る場を持つ

行動が「やらされること」から「自分が選んでいること」に変わったとき、
リハビリは単なる訓練ではなく、自己成長のプロセスになります。

まとめ

クライアントの行動変容を導くために、セラピストが意識すべきことは次の五つです。

  1. 目標の奥にある価値を聴く
  2. 行動と信念と自己認識を一致させる
  3. 成功体験を通じて前提を書き換える
  4. 対話によって気づきを促す
  5. 行動が続く構造を整える

行動変容とは、能力の問題ではありません。
「自分は選べる存在だ」と信じられるようになることです。

その信念に光を当てられたとき、
リハビリの質は、技術以上に深いレベルで変わり始めます。

「自分や家族の場合はどうなんだろう」
「今やっているリハビリで、この先も大丈夫なのか」
そんな気持ちを抱いている方もいらっしゃるかもしれません。

ナッセボディワークス兵庫伊丹・宝塚は、
脳卒中・パーキンソン病・脊髄損傷など、
病院でのリハビリを終えた後も
“動きと生活をどうつないでいくか”
を大切にしている自費リハビリ施設です。

一人ひとりの状態を丁寧に確認し、
電気刺激治療機IVES(アイビス)や
免荷歩行装置アンウェイなども活用しながら、
今の生活環境や目標に合わせた関わりを行っています。

「通うかどうか」ではなく、
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小栢 崇裕

【監修者】

株式会社ナッセ / 理学療法士
小栢 崇裕(オガヤ タカヒロ)

プロフィール
新卒で回復期リハビリテーション病院に入職。
その後、2018年4月にナッセへ訪問リハビリ・デイサービス機能訓練指導員として入職。
デイサービスリハビリ部門リーダーとして約20名のセラピストマネジメントやリハビリデータの収集・解析・フィードバックも行う。
研究業績
・第2回日本予防理学療法学術集会
・第36回東京都理学療法学術大会
・回復期リハビリテーション病棟協会 第31回研修大会in岩手