コラム COLUMN
「片手でズボンを履くのが大変で、家族に申し訳ない」 ~着替えが楽になる体の使い方を解説~
脳卒中や神経疾患の後遺症によって片麻痺が残った方からよく聞かれる言葉に、
「片手でズボンを履くのが大変で、家族に手伝ってもらってばかり」
「自分でできないのがつらいし、申し訳ない」
というものがあります。
着替えは一日の始まりに必ず行う動作であり、生活の自立度を左右する大切な動作です。
そのため、うまくできないとストレスや自己否定感につながりやすい一方、少し工夫するだけで驚くほど楽になる場合もあります。
ここでは、片手でズボンを履くときに役立つ体の使い方と考え方を解説していきます。
1. なぜ「ズボンを履く」が難しいのか
ズボンを履く動作は単純に見えて、実はとても複雑です。
バランスを取りながら片足を持ち上げ、布を通し、腰まで引き上げるという一連の動作には、腕・脚・体幹の協調が必要です。
片手しか使えない場合、反対側の手でズボンを広げることができず、足を通す段階からつまずきやすくなります。
また、立ったまま行おうとすると転倒のリスクもあり、「怖さ」が余計に動きをぎこちなくさせてしまいます。
このように、「できない」のではなく
「体の条件に合ったやり方をまだ見つけられていない」
可能性があります。
2. 姿勢の工夫 ― 座って行うのが基本
まず押さえておきたいのは、「立って履こうとしないこと」です。
安定した椅子に浅く腰掛け、背もたれに軽く寄りかかれる状態を作ります。
足裏は床にしっかり着け、転倒の心配がない姿勢をとることで、安心して動作に集中できます。
座った姿勢なら片手でズボンを広げることが難しくても、膝と片手を組み合わせてズボンの口を広げることができます。
例えば、健側の手でズボンを持ち、もう一方の膝に布を引っ掛けることで「もう一つの手」の代わりにできます。
3. 足を通すときの工夫
ズボンに足を通すときは、まず麻痺側から先に入れるのが基本です。
これはリハビリの現場でもよく指導される方法で、「難しい側を先に済ませてしまう」ことで動作の安定を得やすくなります。
足を持ち上げるのが大変な場合は、健側の手で裾を大きく広げて床に置き、そこに足を滑らせるように通します。
足首を持ち上げられないときには、「足を前に伸ばす → 裾を足にかぶせる → かかとをずらして入れる」と段階的に行うのも効果的です。
4. ズボンを腰まで引き上げるときの工夫
両手を使えない方が最も苦労するのは、この「腰まで上げる」段階です。
片手で布を引っ張るとズボンが片側だけ上がり、麻痺側に引っかかってしまいがちです。
ここでも「体の使い方」が大切になります。
おすすめは「体をずらす」方法です。
椅子に座ったまま片方の臀部を少し持ち上げ、体を左右にずらしながらズボンを引き上げると、片手でも布が腰まで届きやすくなります。
また、ズボンの素材選びも重要です。
伸縮性のあるジャージやリハビリ用ズボンは布が滑らかで片手でも扱いやすく、動作の負担を大きく減らしてくれます。
5. 道具を上手に使う
「自分の力だけで何とかしなければ」と考える方は少なくありません。
しかし、道具を使うことは「甘え」ではなく「自立を支える工夫」です。
着衣補助具としては、以下のようなものがあります。
- リーチャー(取っ手つき補助具):足先に布をひっかけて持ち上げられる。
- 滑りのよい椅子カバー:お尻をずらしやすくなり、ズボンを上げやすい。
- ゴムベルトつきの衣類:片手で引っ張っても腰にフィットしやすい。
これらをうまく取り入れることで、「できない」を「できる」に変えることが可能です。
6. 気持ちの面を大切にする
「片手でズボンを履くのが大変」という悩みには、動作の難しさだけでなく「家族に迷惑をかけてしまっている」という心理的な負担が含まれています。
リハビリの現場で感じるのは、「自分でできるようになること」は動作の問題を超えて、自己肯定感や家族との関係を大きく改善するということです。
家族もまた、「できる部分は自分でやってほしい」という気持ちと「無理をしてほしくない」という気持ちの間で揺れています。
だからこそ、工夫によって「ここまでは自分でできる」と示すことが、お互いの安心につながります。
まとめ
片手でズボンを履くことは決して簡単ではありませんが、
- 座って行う
- 麻痺側から足を通す
- 体をずらしながら引き上げる
- 道具や素材を工夫する
といった方法を組み合わせることで、着替えの負担を大きく減らすことができます。
そして何より大切なのは、「自分に合ったやり方を見つけること」です。
完璧に一人でやる必要はありません。
「できる部分を少しずつ増やす」という発想こそが、自立への一歩となります。
「自分や家族の場合はどうなんだろう」
「今やっているリハビリで、この先も大丈夫なのか」
そんな気持ちを抱いている方もいらっしゃるかもしれません。
ナッセボディワークス兵庫伊丹・宝塚は、
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