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リハビリは治るまで実施できる?できない?

コラム

以前の投稿で、リハビリの目的のひとつは、

『(様々な疾患・外傷により)元々あった状態から変化した身体状況を、できる限り、元の状態に戻すこと』

…と、お伝えしました。

では、実際のところ、“元の状態に戻る” ≒ “治る”まで、リハビリを続けることはできるのでしょうか。

現時点では、日本の保険診療下では、どなたでも “治る” までリハビリを続けることは、基本的にはできません。例外はありますが、実施することのできる期間や時間が定められています。これは、

 ・各疾患や病態により、効果的にリハビリの成果が得られる期間が、今までの研究によっ て統計学的に、ある程度明らかになっているから

 ・病院の病床を占有してしまうことで、病院がパンクしてしまわないようにするため

 ・医療費が膨大となり、国の財政を圧迫してしまわないようにするため

といった理由が考えられます。

リハビリの効果についてはコチラのコラムをご覧ください

 しかし、リハビリを受ける当事者となったみなさんにとっては、

 「本当にその期間内で、ちゃんと治るのか?」

 「もし治らなかった場合には、どうなるんだ……?」

と、不安や疑問も出てくると思います。

ですので、まずは実際に、どのくらい保険診療下でリハビリを受けられるのか、しっかり把握しておきましょう。

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【リハビリを受けられる期間・時間】

では、より具体的に紹介していきます。

まず知っておいていただきたいのが、このリハビリの時間を考えるときに用いる『単位』という言葉です。

『1単位=20分間』のことを指します。ぜひ覚えておいてください。

また、“医療保険”と“介護保険”によって定められている期間が変わったり、疾患によっても例外が定められていたりと、結構複雑です。

ここでは大まかにまとめますが、詳しく知りたい方はかかりつけ医の先生や担当のケアマネージャー様に尋ねてみたり、また当方へ質問されたりなさってみてください。

<医療保険下でのリハビリ>

病院やクリニックで行う、入院・通院リハビリが主です。

疾患別に、実施できる期間が以下のように定められています。

(医師の診断が下りた日を最初として)

脳血管疾患等リハビリ:180日

心大血管疾患リハビリ:150日

運動器リハビリ:150日

廃用症候群リハビリ:120日

呼吸器リハビリ:90日

これに加えて、上記期間内では1日6単位(つまり120分)までリハビリ実施可能です。

また、回復期リハビリテーション病院に入院していたり、脳血管障害等を発症後60日以内の方であったりした場合には、1日9単位(つまり180分)までリハビリ実施可能です。

ちなみに、、、

上記期間を過ぎた場合でも、1ヶ月に13単位分は診療報酬として算定できるため、リハビリ実施可能です。しかし、極端に期間が減るため、当事者側としては効果的なリハビリを受けられない可能性が高く、また医療機関側としても採算が合わない状態となり、非現実的な状態になると言えます。

<介護保険下でのリハビリ>

 介護老人保健施設(入所)やデイサービス・デイケア(通所)、訪問でのリハビリが主です。

この入所・通所では、疾患別に実施できる期間は定められておらず、明確な上限もありません。

但し、一般的に、入所では1日に1単位(20分間)以上のリハビリを週2回以上実施するように規定されています。

加えて、入所してから3ヶ月以内は、週3回以上のリハビリを受けることができます。

また通所では、1回につき個別に行うリハビリを1単位程度行うところが一般的で多いように感じます。

実施する先生も理学療法士・作業療法士・柔道整復師などなど様々であり、それぞれの施設にて特色があるので、そういう視点も心に留めておいてください。

さらに、訪問でのリハビリでは、週に6単位以内のリハビリ実施が可能です。

基本的に、1回につき2~3単位での訪問介入が多い為、週に2~3回実施できる換算になります。
ここでも、疾患による実施期間の規定は特にはありません。

実際にどれくらいの時間で治る?

リハビリを受けられることができる期間や時間はどんな病気やケガをしたのかによっても異なることが分かりました。

では実際に、前述したような時間内で確実に良くなるのでしょうか?

病気やケガにも治りやすい期間というものがあります。

脳血管障害の場合、発症から半年がもっとも改善しやすい期間と言われています。

これはあくまで統計的に言われていることであり、すべての人がこれに当てはまるわけではありません。

改善率という点で考えると、確かに発症から年月が経過していると、一般的には良くなりにくい状況にはなってきます。
退院してからは様々なリハビリをすることも可能ですが、あくまでも維持するためのリハビリという位置づけになります。
そのため、大きな改善を目指すなら、入院中に積極的なリハビリをすることが望ましいでしょう。

もちろん、退院をした後の生活期においても改善を目指すことは可能です。

そのためには、リハビリ以外の時間も自主トレーニングを欠かさず行い、
その自主トレのメニューもセラピストが定期的にチェックすることができる環境があれば、改善する可能性は高まります。

自主トレをしているのに改善しない、という話もよく聞きます。

よくありがちなこととして、自主トレをしている内に徐々に我流になってしまい、効果的なトレーニングでなくなってしまっていることが多々あります。
どんな方法があなたに合っているのか、関わりのあるセラピストがいるならば、ぜひ相談してみてください。

【まとめ】

 ここまで、リハビリが実施できる期間・時間に関して、大まかにですがまとめてきました。
ざっくりとした認識ですが、、、

 <医療保険下>

 ・集中的にリハビリできる分、短期間で効果的な成果が期待しやすい

 ・実施可能な期間が限られている

 <介護保険下>

 ・回数や時間、頻度が医療保険下と比較すると少ないため、短期間での成果は期待薄

 ・実施可能な期間に期限はないため、長期的に改善・維持を行える

…といった特徴があることが、分かっていただけたかと思います。

(様々に特例や例外がありますので、その点お忘れなく、必要でしたら確認していくようになさってください)

 ただ、やはり医療保険下でのリハビリ実施期間が過ぎた方でも、

 「もっと機能回復を目指したい!」

 「できる限りリハビリをしっかりやって、元の状態に戻りたい!」

という方はたくさん居られると思います。

そういう方のために、保険適用外ではありますが<自費診療でのリハビリ>があります。
期間や時間の制限なく、効果的なリハビリを受けることができます。

現在の日本の制度では、病院を退院すると、
あくまでも維持することを目的としたリハビリが中心となるため、
治るまで実施できるかと言われれば、
「すべての方が治るわけではない」
という答えが正しいと考えられます。

そのため、まだまだ日本のリハビリ制度を改革していく必要はありそうですね。

各当事者様の状態や生活に合ったリハビリを選択していく知識の一端として、この記事が役に立てれば幸いです。

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小栢 崇裕

【監修者】

株式会社ナッセ / 理学療法士
小栢 崇裕(オガヤ タカヒロ)

プロフィール
新卒で回復期リハビリテーション病院に入職。
その後、2018年4月にナッセへ訪問リハビリ・デイサービス機能訓練指導員として入職。
デイサービスリハビリ部門リーダーとして約20名のセラピストマネジメントやリハビリデータの収集・解析・フィードバックも行う。
研究業績
・第2回日本予防理学療法学術集会
・第36回東京都理学療法学術大会
・回復期リハビリテーション病棟協会 第31回研修大会in岩手