コラム COLUMN

『リハビリ』には、様々な種類があることをご存知ですか??

コラム

みなさんは『リハビリ』と聞いて、どんな光景を思い浮かべるでしょうか。

整形外科クリニックでの、たくさん並んだプラットホーム。

テーブルの上でお豆をつまむような、箸を使う練習。

アスリートの、マシンを使った筋力トレーニング。

実際に食事しながらの飲み込みの練習。

屋外で、杖を用いて歩行したり、階段の昇り降りをしたり。

一概に『リハビリ』と言っても、様々な種類があります。

今回、改めてにはなりますが、リハビリにはどういった種類や分類があるのか、ご紹介していこうと思います。

そういう種類を知っておくことで、自身や自身の身の回りでリハビリが必要となった際に、何かしらの参考や手助けになれれば、、と考えています。

リハビリに関するご相談を受付中!
まずはお気軽にご連絡ください。

『リハビリ』には、様々な分類がある!

まず、私のようなセラピストが大学や専門学校等で習う、「リハビリとは」といった、基本的で定義のような、リハビリ分野の分類があります。それは、以下に示すような5つに分類されます。

Ⅰ.医学的リハビリテーション

これは、冒頭にも挙げたような、一般的にみなさんが『リハビリ』と聞いて思い浮かべるような、医療・介護機関で行うリハビリのことです。

主に、疾患や外傷により失われた身体機能の回復・再構築、さらには身体能力の維持や強化なども目的として含まれます。

Ⅱ.教育的リハビリテーション

これは、その人が本来持っている能力を活用できるように、さらには活用して自己実現が図れるように、その能力開発を支援する活動のことを指します。

具体的には、障害児教育や特別支援教育などがイメージしやすいかと思いますが、こども世代だけが対象ではなく、一生涯を通じた社会教育等も含まれます。

Ⅲ.職業的リハビリテーション

これは、働く上でその人がその人らしい仕事に就き、なおかつそれを継続して行っていけるようにサポートする、職業上のサービスのことを指します。

具体的には、職業指導や職業訓練、職業紹介といったサービスがあります。

Ⅳ.社会的リハビリテーション

これは、一般社会に対して、その人が自分らしく自身の役割を担い、社会参加できる能力を高める過程のことを指します。
加えて、その一般社会の中で社会参加する上で何かしらの障害や障壁があるならば、それを改善・再構築する努力をする過程も含まれます。
難しい言葉が並んでいますが、イメージとしては、「社会の一員として、差別や区別なく生きていくようにする」といった感じでしょうか。

Ⅴ.リハビリテーション工学

これは、工学の力を用いてアプローチする支援・サービスのことを指します。
具体的には、義肢装具の利用や住宅改修、機械の力を用いたコミュニケーション方法や、施設・交通機関のバリアフリー化等も含まれます。
恥ずかしながら、私が学生として学んだ15年程前には、この「リハビリテーション工学」は表立った分野の一つとして挙がっていませんでした。
技術の革新はすさまじいものがありますね。

「医学的リハビリテーション」をより詳しく分類すると。。。

次に、実際に私たちが主にイメージする、「Ⅰ.医学的リハビリテーション」を、より様々に分類したものをご紹介していきたいと思います。

 まず、Ⅰ.を疾患別に分類すると、以下のように大きく5つに分けられます。

・脳血管疾患等

脳梗塞・脳出血・くも膜下出血といった、脳の梗塞・出血を対象とする

・運動器

関節・骨・靭帯といった、身体の動きを担う運動器に起こった疾患や障害を対象とする
例えば、骨折や人工関節置換術後など。

・心大血管疾患

心臓や血管といった、循環器に起こった疾患や障害を対象とする
例えば、心筋梗塞や狭心症など。

・廃用症候群

長期の療養や臥床によって引き起こされる廃用の症状で起こる障害を対象とする

・呼吸器

呼吸機能の低下を引き起こす疾患や障害を対象とする
例えば、肺気腫や誤嚥性肺炎など。

この5つの分類を見て、ピンときた方も居られるかもしれませんが、リハビリの算定日数についてお話ししたコラムで、この分類のお話をしました。
つまり、日本の医療保険下で行うリハビリを疾患別に分けた際に、この5つに分けられますよ、という訳です。

ですので、一見この分類には含まれないように見える、脊髄損傷のような神経に関わる疾患や障害、また、パーキンソン病などの難病指定されている疾患も、この5つの分類の中に入っており、リハビリを受けることができます。
詳しくはまた調べてみてくださいね。

次に、Ⅰ.を時期別に分類すると、以下のように大きく4つに分けられます。

・急性期

対象となる疾患や障害が起こって間もない期間に行うリハビリ。
その症状や全身状態が落ち着いていない状態から開始することが多く、全身管理と並行して行っていくため、そのリスク管理や負荷量設定が重要となる。

・回復期

対象となる疾患や障害がある程度落ち着いた状態で行うリハビリ。
全身状態が落ち着き、なおかつ起こってから早い時期に行えるため、リハビリの効果が最大限に反映されやすい期間とされる。

・維持期

対象となる疾患や障害がある程度定着した期間に行うリハビリ。
その状態が増悪しないように、名前の通り“維持する”ことを目的としている様に捉えられやすいが、まだまだ回復が望める期間でもある。

・終末期

人生の終末に向けて、できる限りその人らしい時間を過ごせるように支援するリハビリ。
主に末期がんの方に向けて使う言葉の意味合いが多く、身体能力の維持や廃用予防、疼痛緩和などを目的に行う。

発症から在宅生活までの一例

例として、脳梗塞を発症した私の母の場合を、時系列に沿ってお話ししますね。

まず、発症してから救急車で3次救急病院に運ばれ、一命をとりとめました。
但し、脳梗塞を起こした部位が脆弱で安定せず、また血圧等のバイタルサインも不安定だったため、それらの状態の安定化をまず目的に治療が開始しました。
併せて、廃用予防や基本的な運動機能や感覚の回復を目的としたリハビリも始まり、それが約3週間続きました。
これが、急性期のリハビリ、となります。

そして、ようやく脳梗塞の部位やバイタルサインが安定したため、リハビリを主目的とした回復期病院に転院しました。
1日最大3時間のリハビリ、その時間外の自主トレなど、能力回復を集中的に行う入院生活が始まり、それが約半年続きました。
これは、回復期のリハビリ、となります。

また、病院でのリハビリが終了して自宅に戻ってからも、通所リハビリと訪問リハビリを受けています。
一般的な脳梗塞の治療過程の中で、機能回復が大きく望めるゴールデンタイムは発症から約1年~1年半の間、と言われています。

それから考えると、在宅復帰してからも約1年近く、回復期のリハビリを行い、それ以降は維持期のリハビリへと移行し、現在に至る、ということになります。

ありがたいことに、維持期の今においても、歩容の改善がみられたり、麻痺側の手を用いて掴めるものが増えたり、と回復の幅は広がっていて「すごいな」と感心しています。(専門職の目から見ると足りないところも多くて、ついつい口喧嘩も増えてしまったりするのですが。。。)

さらに、Ⅰ.を内容別に分類すると、以下のように大きく3つに分けられます。

・理学療法(理学療法士が行う)

 主に、基本的動作能力の回復を目的に行うものを指します。

 例えば、寝返りや起き上がり動作、座位や立位の保持、立ち上がり動作や歩行など、多岐にわたります。一般的に、歩行練習のイメージが強いことから、医療機関では下肢に対するリハビリの担当、というイメージがあるかもしれません。

・作業療法(作業療法士が行う)

 主に、日常的基本動作の回復や応用的な作業活動の回復を目的に行うものを指します。

 例えば、着替え動作や入浴動作、食事や調理の動作、トイレ動作など、こちらも多岐にわたります。一般的に、手を用いて行う動作が多いイメージから、医療機関では上肢に対するリハビリの担当、というイメージがあるかもしれません。

 加えて、精神的な障害に対する専門的なアプローチも、作業療法の一分野です。

・言語療法(言語聴覚士が行う)

 主に、コミュニケーション能力や嚥下動作の回復を目的に行うものを指します。

 例えば、聞くことや話すこと、飲みこみ動作など、名前の通り、口や喉に関するものが多いです。失語症や構音障害、嚥下障害等へのアプローチを専門的に行います。

多職種の連携

今から話すことは、理学療法士である私の私見ではありますが。。。

いざ臨床に出てしまうと、正直なところ、理学療法と作業療法には明確な線引きはなく、お互いの強みを生かしながらアプローチしていくことが多いように感じています。
特に、医療機関を離れた介護施設や訪問でのリハビリでは、より日常生活に密着した広い視野をもって、総合的に関わることも求められます。
そのため、理学療法士であっても肩のリハビリを行ったり作業課題を通じたアプローチを行うことはありますし、作業療法士であっても屋外で歩行練習を行ったりすることもあります。

その点、言語療法に関しては、より細かい分野に特化して専門性の高いアプローチを行うため、しっかりと住み分けをしてリハビリを担当する方が、より効果の高いリハビリが提供できるように感じます。
私のような理学療法士でも、口や喉の基本的な身体機能へのアプローチとして関われる部分もありますが、やはり“餅は餅屋”のような部分もあり、そこは専門職同士が協力して関わっていくことが大切だと、考えています。

大谷翔平選手の場合

最後に簡単にではありますが、イメージしやすいように、ひとつ例を挙げてみます。

今、世界で大活躍されている大谷翔平選手。

彼はトミー・ジョン手術という肘の靭帯再建術を受け、その前後で医学的なリハビリを行いました。その分類を考えると、

疾患別としては → 運動器

時期別としては → 急性期および回復期

内容別としては → 主に理学療法(作業療法の要素もあり)

といった感じになるかと思われます。非常に簡潔に分類しましたが、イメージする一つの例としては思い浮かべやすかったのではないでしょうか。

まとめ

今回、改めて『リハビリ』をいろいろな分類に沿ってご紹介しました。

そのことで、リハビリとはどういったものなのか。それを、より少しでも分かりやすく、イメージしてもらえるきっかけとなっていれば幸いです。

大抵の方は、リハビリを必要とする状況に陥る場合、ご病気にしろお怪我にしろ、唐突に起こることであり、ましてや医療介護分野の専門的な話も多いため、なかなか馴染みが少なく、とっつきにくい話も多いかと思います。

しかし、大切なご自身やその周りの方の身体の回復のために、『リハビリ』は、上手く用いることで非常に効果的に働く手段の一つです。冒頭でも述べましたが、それを知っているだけでも、万が一必要となった際に、焦ってしまったり悩んだりすることを減らすことができるかもしれません。

その一端を、このコラムが担うことができていたとすれば、これほどうれしいことはありません。

今回も、ここまでコラムを読んでいただき、ありがとうございます!

リハビリに関するご相談を受付中!
まずはお気軽にご連絡ください。

小栢 崇裕

【監修者】

株式会社ナッセ / 理学療法士
小栢 崇裕(オガヤ タカヒロ)

プロフィール
新卒で回復期リハビリテーション病院に入職。
その後、2018年4月にナッセへ訪問リハビリ・デイサービス機能訓練指導員として入職。
デイサービスリハビリ部門リーダーとして約20名のセラピストマネジメントやリハビリデータの収集・解析・フィードバックも行う。
研究業績
・第2回日本予防理学療法学術集会
・第36回東京都理学療法学術大会
・回復期リハビリテーション病棟協会 第31回研修大会in岩手