コラム COLUMN
リハビリで痛いと感じるのはなぜ?痛い時の対処方法を紹介
痛みを解消する方法のひとつにリハビリがありますが、痛くても続けることは正しいのか?
リハビリをしている方の中にはこのようなことを経験する方も多くいると思います。
今回はその判断基準についてご説明していきます。
多くの人はケガなどで「痛い」という経験をしたことがあると思います。
痛いところを改善するための対処法には痛み止めを飲んだり貼ったりといくつかありますが、
その対処法のひとつとして、リハビリが挙げられます。
リハビリは痛めた部分をを良くする為に有効な対処法かもしれませんが、
スポーツ選手がしているようなキツいリハビリを想像すると、余計に痛くなるのではないかと心配になります。
さらにいうならば、可能な限り痛くないリハビリがしたいという方がほとんどではないでしょうか?
この記事ではリハビリ中の痛みについて、以下のことが分かるようになっています。
- リハビリ中の痛みはどこまでOKなのか。
- 痛くないリハビリはできるのか?
痛みがあり、リハビリに不安がある方はぜひこの記事を読んでいただき、
リハビリ中の痛みに対する対処方法を実践してみてください。
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目次
そもそも「痛い」と感じるのはなぜか?
脳と炎症の関係
ヒトは、の組織が損傷した際に引き起こす刺激によって”痛い”と感じています。
また、この”痛い”と感じるセンサーは体中のいたるところにあり、そのセンサーが脳に痛みを伝えることで、身体は”痛い”と感じるようになっています。
例えば、指先をドアではさんでしまった場合、赤く晴れたり、熱をもったりする炎症反応が生じます。
そしてこの炎症反応は神経(黄色い線)を通って、脳に辿り着きます。
脳ではこれを痛みとして知覚し、炎症している部分が「痛い」と感じるように指先まで神経を伝達します。
そもそもなぜ痛いと感じなければならないのか
痛みは人間にとって必要不可欠な感覚です。
例えば、上記のドアで指をはさんでしまった方の場合。
仮に痛みを感じない人だとしたら、きっといつものように手を使うはずです。
しかし、ドアにはさんだ手は外見上、赤くぱんぱん腫れていて、明らかに指も曲がりにくくなっているはず。
ですが、痛みを感じない人は
「痛みがないから」
という理由で使い続けることになるでしょう。
しかし、このままでは治癒は遅くなり、場合によっては関節の変形や組織損傷などを引き起こします。
ひどい場合、指が思うように動かなくなる可能性もあります。
このように痛みは身体を守り、治癒を促し、炎症を抑える助けをしているため、必要な感覚となっています。
炎症がなくても痛みを感じる?
痛みが生じるのは基本的には炎症反応があるから、と先述しましたが、
炎症がなくても痛みを感じる場合もあるのでしょうか?
答えは、、、
あります。
例えば、神経痛によるものが代表的です。
具体的な病名としては線維筋痛症と呼ばれる、全身に痛みを感じ、筋肉がこわばる症状を呈する疾患です。
また、神経痛以外にも、関節リウマチや関節症なども炎症に由来しない痛みと言われています。
これらは炎症反応がなくても、直接的に骨と骨同士がぶつかることによる痛みを感じています。
痛みの感じ方や程度は環境や体調などによっても異なる
そもそも痛みの感じ方は個人差が大きいです。
性別や、天候、疲れている時など、、、その環境や状況によっても痛みの感じ方は大きく変わります。
他人からみれば、それぐらい大したことないでしょう、と思われても、自分自身が感じる痛みはかなり強いなんてことは経験したことのある方も多いのではないでしょうか?
痛いと感じる部位
また、人間が痛いと感じる部分は”体中の至るところ”です。
ただし、痛みの強弱には差があり、痛みを感じやすいところや鈍いところがあったりします。
また、刺激の種類によってもその強弱は変わります。
例えば、頬をつねった時と肘をつねった時、それぞれ同じ強さでつねって頂くと分かると思います。
痛みの感じ方に差があるのではないでしょうか?
このように身体の中にも特に痛みに敏感な部分とそうでない部分があります。
リハビリ中に痛みを感じる原因
リハビリ中に痛みを感じる原因は主に4つあります。
- 筋肉痛
- 関節痛
- 別部位への負担
- 神経の刺激
それぞれの原因について解説していきます。
筋肉痛
筋肉痛は、筋肉が普段とは異なる運動を行った際や、過度な強度での運動を行った際に最も一般的に発生します。
リハビリ中、特に新しいエクササイズや強度が導入されると、筋肉はこれに適応するために反応します。
この適応の過程で、筋肉の微小な筋繊維が損傷し、修復の過程が始まります。
修復過程は、筋肉を強化し、次回同様の運動に対する耐性を高める役割がありますが、過程中に炎症や筋肉の緊張が生じ、筋肉痛を感じる原因となります。
関節痛
関節痛は、関節やその周囲の組織が普段とは異なる動きを行った際や、過度な強度での動作を行った際に一般的に発生します。
リハビリの際に新しいエクササイズや強度が導入されると、関節はこれに適応するために反応します。
この適応の過程で、関節やその周囲の組織に過度なストレスがかかり、炎症や微小な損傷が生じる可能性があります。
この炎症や損傷は、関節の動きを制限し、関節痛を引き起こす主要な要因となります。
別部位への負担
人の身体は複雑な連鎖的な動きを持つネットワークとして機能しています。
例えば、膝の怪我や弱化により膝が適切に機能しないと、それを補完するために隣接する部位、例えば股関節や足首が過度に動作することが考えられます。
このような状態が続くと、本来の動作パターンとは異なる動きをする部位に過度なストレスや負担がかかり、痛みや怪我の原因となることがあります。
リハビリ中、特定の筋肉や関節の機能を改善することが主目的であるが、その過程で身体の他の部位に過度な負担がかからないように注意が必要です。
神経の刺激
身体の各部位には多くの神経が走っており、これらの神経は筋肉や関節と密接に関連しています。
リハビリの過程で筋肉や関節を動かす際、特に過度に伸ばしたり、不適切な姿勢や動きで圧迫したりすると、神経組織にストレスがかかります。
このストレスは神経を刺激し、痛みやしびれなどの神経症状を引き起こす可能性があります。
また、怪我や手術などで周囲の組織が炎症を起こしている場合、その炎症部位の腫れや熱によっても神経が刺激され、痛みを感じることが考えられます。
リハビリ中の痛みを改善する対処方法
リハビリをする理由のひとつに
「痛みを改善したい」
と、望んでいる方は多いと思います。
例えば、骨折後の手術などの場合は、
術部やその周辺に痛みがあり、
これを何とかしたいと思うことが多いと思います。
これを何とかするためにできる対処法は大きく3つあります。
- 安静にする
- 痛み止めを内服、塗布
- リハビリで改善する
それぞれ詳しく説明していきます。
1. 安静にする
これは、もっとも基本的で大切な対処法です。
炎症が生じてから時間があまり経過しておらず、
炎症も痛みもかなり強い、という様な状況ではまずはこれが1番適切です。
また患部が熱を持っていたり、腫れている等の場合は、
RICE(ライス)処置をすることが重要です。
RICEとは各処置方法の英語の頭文字をとっています。
R…Rest(安静)
画像は日本整形外科科学会より引用
E…Elevation(患部を心臓より高くする)
画像は日本整形外科科学会より引用
I…Icing(冷やす)
画像は日本整形外科科学会より引用
C…Compression(包帯などで圧迫する)
画像は日本整形外科科学会より引用
2. 痛み止めを内服、塗布
この対処方法は炎症初期から何年も取れない痛みまで、幅広い期間で使用されています。
ただし、炎症を抑え、痛みを感じにくくする作用であることがほとんどなので、
損傷している部分が治ったわけではないので注意が必要です。
3. リハビリで改善する
リハビリで痛みを良くするイメージがない方もいるかもしれないので、
簡単にお伝えすると、
リハビリでは痛みが出にくい状態をつくっています。
例えば、変形性膝関節症等の場合、
膝関節が変形し軟骨がすり減ることで痛みが生じるというのが代表的です。
リハビリではそもそも変形する原因を改善することで痛みを改善する、
という対処法をおこないます。
変形性膝関節症の主な原因は、
太ももの筋力低下や体重増加などで膝関節にかかる負担が大きくなり、
時間をかけて変形が進行してしまいます。
それに対してリハビリでは太ももの筋力を鍛えたり、
体重を減量するような指導をしたりすることで、
結果的に膝の痛みを改善することができます。
リハビリ中の痛みはどこまでOK?
リハビリは痛みを改善する対処法であることは、なんとなくご理解いただけたかと思います。
しかしながら、実際にリハビリをしていると「痛くて続けられない」ということはあるかと思います。
基本的には痛みが出ないようにリハビリを進めていくことが一番かなと私は考えますが、
どうしても動かすと痛い、というような場合もあります。
また、ほんとにこんなに痛くても大丈夫なのだろうか?
と、これ以上悪化しないかと不安にもなります。
実際にはどこまでの痛みならリハビリを継続しても良いのでしょうか?
痛みがある場合のリハビリ手順
実際にリハビリをするセラピストはどのような手順で痛みを改善しようとしているのか、その一例をご紹介します。
- まず、痛みはどこにあり、どのような動作で、どの程度なのかを評価・確認します。
ここでは痛みを評価・確認しています。ここではどの程度の痛みがあるのか、その痛みを再現して確認するため痛みを伴います。
- 次にその痛みが出にくいようにするための状態をつくるためのリハビリをします。
実際に痛みを改善するためのリハビリをおこないます。ここでは固くなった筋肉や関節などを柔らかくする場合が多いです。また、このリハビリはあまり痛みが生じないようなストレッチやトレーニングが望ましいです。
- 最後に1.でやった動作やそれに類する動作で痛みの感じ方を確認したり、1.で確認した動作が再びできるようにリハビリをします。ここでも痛みを伴う場合があります。
1. と 3. では痛みを評価・確認しているので、多少の痛みを感じてしまいます。どこにどのような痛みがあるのかを確認しなければ、リハビリの方針や計画が立てにくくなってしまいます。
2.の段階では実際にリハビリをおこなっています。
これにも担当しているセラピストによって様々な方法があり、
必ずこのような方法でリハビリをするというようなものはありません。
そのため、痛みを伴わないリハビリをすることもあれば、
痛みを伴う場合もあるという事になります。
「少しの痛みであってもこの痛みは大丈夫なのだろうか?」
「本当にこれで良くなるの?」
と考えるのではないでしょうか?
では、どのような痛みなら中止するのが良いのでしょうか?
痛みがだんだん悪化する場合は中止!
ひとつの大きな判断基準としては、
リハビリをしていて最初の痛みと比べて、
時間とともに痛みが強くなっていると感じたら中止しましょう。
痛みがあるところに対して、
その部位を動かすようなリハビリをすると痛みが生じやすくなります。
リハビリの過程で痛みの部位を動かすことは必要になる場合がありますが、
その部位を動かすことで以下のような症状が出てくることがあります。
A.B.の場合はリハビリを中止することを勧めます。
なるべく痛みを感じないようなリハビリ方法に切り替えるなどリハビリ方法を再検討する必要があります。場合によっては炎症をひどくしてしまい治癒が遅くなることや後遺症が残るなどのリスクもあります。
C.D.は様子をみながら続けても大丈夫な場合が多いです。
ただし、リハビリ終了後から数日後に痛みが強くなっている場合があるため、
初めてリハビリをする際はその場だけでなく、数日間は様子をみておくと良いでしょう。
リハビリ後に生じた痛みがある場合はセラピストに報告し、
なぜ痛みが生じているのか確認してもらい、改めてリハビリプランを再検討しましょう。
リハビリ中になかなか治らない痛み
前項で痛みを改善する対処法についてご説明しましたが、
3つの対処法(①安静、②痛み止めなど、③リハビリ)では対応できない場合もあります。
それは、骨折や筋肉・靭帯などの組織の損傷(断裂など)、
骨の変形などはリハビリでは対処することが難しく、手術が必要となる場合です。
変形性膝関節症の例では、重症化すると骨が変形し棘(とげ)のような形となり、
それが原因で痛みが生じるため、リハビリでは痛みの大きな改善は困難と考えられます。
その他にも肩関節の腱板損傷の例でも既に筋肉が断裂してしまっている場合は強い痛みだけでなく、
思うように腕が上がらずに生活に支障をきたすこともあります。
上記のような場合、医師に相談し適切な処置をしていただくことをオススメします。
痛みを感じたら早めの対応を…!
変形性膝関節症は時間をかけて重症化し徐々に痛みも悪化する場合が多いです。
重症化を避けるためには、早めにリハビリなどで原因を改善することで重症化を防ぐことが可能です。
変形性膝関節症に限らず、肩や腰などに痛みを感じ、なかなか治らない場合は早めに医師やセラピストに相談し、
適切な処置を受けることをオススメします。
【まとめ】まず痛みについて適切に評価をする
痛みは個人差がありますが、痛いと感じる方にはストレスでしかありません。
一日でも早く改善するためには、まずは適切な痛みの評価をしてもらうことが大切です。
リハビリ前の痛みとリハビリ中の痛み、さらにはリハビリ後の痛み、
とリハビリに関する痛みでも時系列別に分け、今後のリハビリの方針を考える必要があります。
痛みは主観的なものなので、リハビリセラピストは完全には分かりません。
あなた自身がセラピストに痛みを伝えることで、
リハビリメニューも変わるので、不安な時は我慢せずにすぐに相談してください。
私たちセラピストも可能な限り、事前に説明をしてリハビリをすることが望ましいと考えているので、
もし説明が分かりにくい場合はなんでも質問したほうが良いですね。
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